ランニングをはじめてしばらくすると『足が痛い』と感じる時はありませんか?筆者も30年というランニング歴があるので、これまでに何度か足が痛くてランニングをおやすみするという期間がありました。靴が合わなかったから?走り方が悪かったから?走りすぎたから?原因は必ずしも1つではありません。今回は足が痛むポイントに触れつつ、痛みにくい走り方のポイントと、改善するための考え方を書いていこうと思います。
目次
どうして走ると足が痛むのか
走ると足が痛くなってしまうことが多くありますが、この章を読み進めることによって、痛みの原因について挙げられるポイントを理解することができます。改善する前に原因を押さえていきましょう。
原因1:能力以上の走りをしている
能力以上の走りというのは、距離や時間について。ランニング歴が3ヶ月の方と10年の方でしたらやはり10年の方の方がたくさん走っても大丈夫そうな気がしますよね。現在の自分のランニング能力よりも速く走ろうとした時に、または長く走った時にケガのリスクは高まると言われています。
長く走った場合は、疲労した部分の筋力を上手に使えず、力が発揮できなかったり、衝撃を吸収できなかったりするため、そこを補うために別の筋肉が働き(代償動作と言ったりします)同じ部分に過度な力が加わったりするため、痛みが出やすいと言われています。
速く走ろうとした場合は能力以上の負荷がかかりやすいのは簡単に想像できますよね。特に学生時代などにハードにスポーツをしてきた方が、大きな力を発揮しようとした際に、体はその力の発揮の仕方を覚えているので力を発揮することができてしまいます。しかしながら体は学生時代のままではないため、能力以上に速く走ろうとした場合にケガは起きやすくなってしまいます。

原因2:靴が合っていない
靴が合っていない場合もあります。『も』と記載したのは、靴のせいだと思われることが、実は靴のせいだけではない場合も多いからです。
『自分の足にあった靴』を選ぶことは大切ですが、どちらかというと履いた靴によって走り方に変化が出やすくなり、走り方(体の使い方)によってケガが出やすくなる場合があるので、そちらの点については原因3の方で書いていきます。
ここでいう『靴が合っていない』というのは、サイズ感や足の形に合っていないシューズを選ぶことによって、マメができたり足の形が変形してしまったりすることによるケガ(ランニング障害)をいいます。ちょっと長くなりそうなので後ほど詳しく書きたいと思います。
原因3:走り方がよくない
足が痛むひとと痛まない人、オーバーユース(使いすぎ・走りすぎ)以外の原因として1番大きなところはここに尽きるかなと思われます。ランニングを始めて6ヶ月以内に辞めてしまう人の割合は7割近くになると言われています。もちろん継続できない理由は色々あると思いますが、ケガや痛みよって辞めてしまう方も多いと言われています。
同じくらいの身長・同じくらいの体重で、同じくらいの運動能力であっても差が出てしまいます。ランニングフォームを改善しようとネット上を検索する人は多くいると思いますが、そう簡単にランニングフォームは変わりませんし、ニューイヤー駅伝など実業団選手の中でもヘンテコな走り方の方はいらっしゃいます。
ウォーキングでは痛くなりにくいけどランニングだと痛む・・その違いは何か。次の章で痛みにくい走り方のポイントや考え方について書いていきたいと思います。
痛みが出てしまう走り方について
痛みが出にくくなる走り方があるならぜひ知りたい!という前に、走っていない状態で痛みが既に出ている方であれば、痛みが引くまで必ず待ちましょう。既に痛みが出ている場合炎症がほとんどですので、炎症を押さえてから取り組み始めてください。
また、この章を読み進めることによって痛みが出やすい走り方の知識を得られます。原因が走り方の場合、まずはその原因を押さえておく必要がありますので、読み進めていきましょう。
知っておきたい『ALTRA』というブランドと考え方
『走り方の話』に行く前に、ランニングシューズに『ALTRA』というアメリカのブランドがあることを皆さんご存知でしょうか?ランナーが自分の足の痛みで悩み、最終的にたどり着くブランドと日本国内で言われることがあります。
ALTRAはアメリカ代表のランナー『ゴールデン・ハーパー』氏が立ち上げたブランドで、実家がランニングショップ(RUNNER’S CORNER)を営んでおり、飛行機に乗って人がやってくるほどカリスマ的なランニングショップだったそうです。そこにやってくる多くのランナーがケガで悩んでおり、ゴールデン氏は『痛くならないランニングシューズ』の開発に挑みました。

行きついた先に『ゼロドロップ』と呼ばれるカカトとつま先がフラットで裸足で立っている時の同じバランスのシューズを生み出し(当時は市販のランニングシューズをオーブンで溶かして踵のクッションを削っていたそうです)お客さんに提案していたそうです。すると、ケガで悩んでいるランナーの方が痛みが出にくくなったということで、市販されているシューズブランドにフラットなランニングシューズの制作を依頼していたそうですが、なかなか受け入れられず、日に日に増してくるフラットなシューズの需要から、本格的なランニングシューズブランドとして立ち上げていったそうです。
創業して約10年、今では全米でも毎年トップ10に入るブランドとして、飛躍的な進化と多くの方から受け入れられたコンセプトは、ケガで悩むランナーに広く受け入れられています。全米でトップ10というとそれほどでもないように聞こえるかもしれませんが、ブルックス、サッカニー、ナイキ、アディダス、ホカ、アシックス、ニューバランス、アンダーアーマー、リーボック、オン、などなど名だたるブランドにたった10年足らずで参入するほど、大資本ではなく個人が立ち上げ始めたブランドとしては異例のスピードで成長を遂げています。
痛みが出やすい走り方とは
痛みが出にくくなる走り方を知る前に、痛みが出やすくなってしまう原因について知っておきましょう。ここでは痛みの原因になってしまう走り方について記載しますので、この章を読んでおけば痛みの原因を理解することができます。
オーバーストライドによるもの
上記した『ALTRA』というブランドが提唱する走り方についての記載の中に、ランニングにおけるケガの多くは『オーバーストライド』によるものと言われています。ここでいうオーバーストライドとは、体の重心の前で着地をすることと定義されています。重心より前での着地は体の進行方向に対し、ブレーキの力が働きます。
つまりアクセルとブレーキを同時に踏むような走り方です。そう言われるといかに体に悪いかが伝わるかと思います。この記事を書いているのは2021年2月ですが、新型コロナウイルスの状況下における外出自粛とGO TOトラベルを同時にやっているような状況で、政策にも疑問の声が多かったですね。
そんな走り方をしていると言われると、『変化』させなければと思いますよね、この後その変化の方法にも触れていきますので、読み進めていってください。
かかと着地によるもの
これも聞いたことがある方が多いと思います。かかと着地が全て悪ではないとされていますが、かかとからの着地が起こる時は、体の重心より前で着地が起きやすいと言われています。ランニングの動作は足が前から振り下ろされてくるので、体の重心より後ろでかかとから着地するのはやってみると困難なことがわかります。
かかと着地をするともう1つ大きな問題があります。それは、着地の衝撃が非常に強いからです。
実験してみてください。今この記事を読んでいるその場でジャンプし、着地をする時皆さんはつま先からふわっと優しく衝撃を受け止めるでしょうか。それともかかとから着地をするでしょうか。
かかとから着地をした時に骨を伝って響いてくる衝撃、これをランニングシューズのクッション性によって感じにくくさせられています。
ランニングシューズがいけないわけではありませんが、クッション性の高いランニングシューズは、本来の衝撃の少ない走り方を忘れさせてしまうデメリットがあります。
この章のまとめ
体の重心より前でかかとから着地することが、ランニングにおけるケガの多くの原因と言われています。まずはこの部分を解消するために、次の章で改善のポイントを読んでいきましょう。
これだけ読めば大丈夫!走り方改善のポイント
ここまで読んできた皆さんは、痛みの原因の多くは体の重心より前で、かかとから着地することがよくないということがしっかりと理解できています。
この章を読み進めることによって、体の重心より前でかかとから着地をしないためのポイントを理解し、実践していくことができます。では早速ポイントを読んでいきましょう。
1分間に180回の着地を心がけましょう

まさにこのポイントに尽きます。まず歩いている時と比べて約3倍もの力がランニング中は足に負荷が加わると言われています。もちろんスピードや出力によりますが、なるべく足にかかる負担を分散させることで痛みが出にくい走り方を身につけていくことができます。
改善に向けて用意するものはスマホ1台で十分
お手持ちのスマホで『メトロノーム』と検索しアプリをダウンロードしてください。メトロノームというのは音楽で使われる一定のリズムを刻むための道具ですが、今ではスマホのアプリでメトロノームを持ち歩くことができます。このメトロノームを1分間に180回で鳴るように設定しましょう。そのリズムに合わせてその場で足踏みをしてください。
多くの方が『テンポが早い』と感じると思います。実際に走り出すとそうでもありませんし、普段からスピードを出して走られる方でしたら普通くらいです。まずはその場で足踏みができるようにトレーニングしてください、その場で足踏みができなければ次のステップには進まない方がいいでしょう。
ちなみにこの180回というのは人間にとって心地よいリズムであることと、重心の前で着地しにくくなる回数(175〜185回)と言われています。
ポイントは『ゆっくり』走ること
ゆっくり走る時に1分間に180歩刻もうとすると、遅ければ遅いほどその場で着地をするような形になります。その時にケガをしやすいポイントで挙げられていた『重心の前でかかとから着地』する状態になっているでしょうか?
その場で180のテンポで足踏みをする場合、多くの方は踵から着地をすると間に合いません。そして進まないので重心より前で足をつくこともほぼ不可能です。
『1分間に180回のリズムでゆっくり走ること』これは改善に向けてとても重要な考え方ですので、まずはこのリズムが音を鳴らさなくてもできるように意識していきましょう。
この章のまとめ
『1分間に180回のリズムでゆっくり走る』これが痛みが出にくい走り方の唯一のポイントです。まずはこれを実践し、痛みが出にくい走り方の感覚を覚えていきましょう。痛みが出る時は出なくなるまでスピードを落としてください。
スピードが出ると痛みが出てしまう場合の多くは、重心より前で着地しやすくなってしまうからです。痛みが出にくい走り方はわかったけどたくさん走りたいし、スピードも出したいという方は、次の章も読み進めていきましょう。
より長く、より速く走りたい方へ『ナチュラルランニング』という考え方
ここまで読んで、健康的な感じで痛みなくゆっくり走るポイントはわかったけど、それでも『より長い距離を走りたいし、より速く走りたい。』私もそうですが、そう思う方は多いですよね。
1番最初の章で記載した『どうして走ると足が痛むのか』について、研究し発表された著書『BORN TO RUN』は、約10年くらい前に世界中で大ヒットしました。その考え方は多くの方の共感を得て、『ナチュラルランニング』として今でも多くの方がその走り方を実践したり、メーカーも商品を生み出しています。もちろんその考え方が普及する前からコンセプトとして研究してきた人たちもいると思いますが、一般の方に広く普及したのは間違いなく『BORN TO RUN』という1冊の本からだと言えるでしょう。
この章を読み進めることによって、より長く、より速く、痛みなく走りたい方にとっての考え方と実践方法を得られます。
ナチュラルランニングとは
『BORN TO RUN』から広がったナチュラルランニングという考え方は、人間の本来の足の機能を生かした衝撃の少ない走り方と要約することができると思います。
人間の足の構造と衝撃吸収機能、シューズとの関わり
人間の足の骨は左右で56個、全部の骨の数が約200個なので、約1/4が足に集まっています。レオナルド・ダ・ヴィンチが「足は人間工学上、最大の傑作であり、最高の芸術作品である」と世に伝えたように、人間の足の骨や関節の構造はとても複雑で、4足歩行から2足歩行になる際に、体重をたった2本の足で支えられるように衝撃の吸収機能が備わっています
これらの本来人間に備わっている衝撃吸収機能を使うことによって、痛みの出にくい走り方を思い出すことがナチュラルランニングの本質と言えるでしょう。
1970年頃まで一般市民が走る『ランニング』という文化はなかったと言われています。1970年代に入ってからEVAというミッドソール(クッション)が開発されてから、飛躍的にランニングの文化も普及したそうですが、このクッションによって本来走る際の人間の足が持つ衝撃吸収機能を失ったと言われることもあります。
今でも小さい子は裸足で遊ばせても痛そうなことはありませんが、大人が裸足で砂利やコンクリートを歩くと痛いと感じる方が多いですよね。人間の足は便利でおしゃれな『シューズ』によって、皮肉にも足本来の機能を忘れてしまっていると言われています。
足本来の機能を取り戻すために
ナチュラルランニングで足本来の機能(衝撃吸収機能)を取り戻すために必要な考え方とは、端的にいうと『裸足に近い状態』で生活をしたり走ったりすることです。読んでいる方が何歳かはわかりませんが、比較的に年齢を重ねた方だとすると、何十年かクッション性の高いシューズで生活をしてきたところから、急に裸足に近い状態になるわけですから、できれば徐々に慣らしていく必要があると言えます。
自然な足の状態のシューズ・履き物を選びましょう
『ナチュラルランニング』をいきなり実践!とは言っても何から初めていいのやら・・
まずは『裸足に近い状態』をいかに作り出すかが重要です。世間ではベアフット(系)シューズと言われたりすることもありますが、平たく言えば薄いシューズです。そして指先が広がりやすいシューズのこともいいます。
選び方のポイント
最初から薄すぎるモデルを選ばない。これは重要です。これらの考え方にハマっていく人の中には『薄ければ薄いほどいい』とか『薄いモデルでたくさん走れた方が足が強くなっている』と思われる方も多いと思います。
何がいいかは人それぞれなのでここで論じることはありませんが、過度に薄いモデルで過度な走り方をする場合、人間は本来そんなに走る生き物ではないためそもそも『ナチュラル』ではありません。やりすぎるとどんどん足幅が広がってしまい『開帳足』と言われる別の症状を作ってしまう場合がありますので、何事もほどほどであることをオススメいたします。
最初に選ぶなら10mm〜20mm
ランニングシューズには『スタックハイト』と呼ばれる、いわゆる靴底から足までの高さ(平たくいうとクッションの厚みと捉えても大丈夫です)が表記されていることがほとんどです。
選び方のポイントとして、最初にナチュラルランニングシューズを選ぶのであれば、このスタックハイトが10mm〜20mm前後のモデルを選びましょう。10mm以下のモデルもありますが、走るのは少し負荷が高いかなと思います。できれば普段履き用とランニング用の2つあるといいと思います。
最初に買うべきは普段履き
というのは、走る時間というのは1日の中で数時間だと思います。反対に普段履きは長時間履くため、走る靴よりもどちらかというと普段履きをまずは見直す必要があります。こちらのADDICTというシューズは、ナチュラルランニングに慣れた方から、薄くて軽量で履き心地がいいと絶大な評価を得ています。オススメです。
ナチュラルランニングシューズの効果について
ナチュラルランニングシューズの効果としては、ソールが薄いことによって、重心より前でかかとから着地した際に一定の痛みを感じるため、痛まない歩き方や走り方を体が自然と探すようになります。そのため、体の負担になりにくい歩き方、走り方が身についていきます。
ナチュラルランニングシューズを履いて歩き方、走り方を見直していきましょう。
以下のブログでナチュラルランニングシューズの選び方や知識、そして各ブランド別の特徴、そしてオススメのナチュラルランニングシューズについて記載してあります。
まとめ
痛みにくい走り方のポイントは『重心の前でかかとから着地しないこと』、そうするためには1分間に180のテンポで音をならし、そのリズムに合わせてゆっくり走ることが重要です。
また、ゆっくり走ることから実践してスピードが出た時に痛みが出てしまう方は、ナチュラルランニングという考え方を取り入れてみるといいでしょう。
最終的には重心の前でかかとから着地しないことに繋がりますが、強制的に近づけられるナチュラルランニングシューズを選ぶのが近道かなと思います。