今回は私の愛してやまないトレランのヘッドランプ(ヘッドライト)、中でも他ブランドの追随を許さない卓越したテクノロジーと機能を併せ持つ『PETZL』社。その最上位モデルであるNAO+が進化し、NAO RLとなって6年半ぶりにアップデートしたんだから、これはもう試さずにはいられないですよね。また、ヘッドライトの選び方が気になる方はこちらもチェック
唯一無二の機能であるリアクティブライティングがトレランの本質とも言える『無駄を削ぎ落とす』ことを体現しつつ、バッテリー性能と重さを削ることに寄与していること、そしてその滑らかさと性能、そしてこれまでの弱点だった操作性が大幅に改善されたと言うことが伝われば嬉しいなと思います。
PETZL(ペツル)のヘッドランプを愛すべきポイント
ヘッドランプ好きの私がPETZL商品をとっても好きになったきっかけはリアクティックプラスという商品からでした。それよりも前からPETZLのヘッドランプは使っていたものの、NAOは高くて買えず笑、確かNAO+と同時期に発売されたリアクティックプラスの『リアクティブライティング』で沼にはまってしまいました。
1、リアクティブライティング
他ブランドが未だ手を出すことができていない領域『リアクティブライティング』機能は、必要な時に必要な明るさをセンサーが自動で感知し適切な光量にすることでバッテリーの消耗を抑えてくれる機能です。これは必要以上の出力を出さない「トレイルランニング」というスポーツの考え方にもマッチしており、私はとても好きです。トレイルランニングは上りの出力を上げてしまうと疲労が溜まってしまい、後半のスタミナを消耗してしまいます。リアクティブライティングは上りで視界の広さを求めない時に出力を落としてバッテリーをセーブする。そんな親和性を感じてしまいます。

このリアクティブライティングを搭載したNAO、NAO+、リアクティックプラスは、スマホと連動することでバッテリーをセーブしたりなど、次世代を感じるヘッドランプとしてガジェット好きの私の心をくすぐる一方、一般のランナーにとっては『難しい』ヘッドランプだったと思います。正直スマホの設定なんてレースの途中で考えたくもないし(事前に設定するんですけどね)ボタンの操作が少し複雑で覚えにくかったり、疲れている時に難しいことを考えたくないランナーにとってはバッテリーの満足度を打ち消してしまう可能性があるほどの操作性だったというのが、販売している立場からすると正直感じてしまうポイントでした。
2、トレランのヘッドブランドの勢力図におけるPETZLの立ち位置
この辺りの操作性の無駄を削り、わかりやすさとコスパで台頭したのがLEDLENSERです。
『玄人=PETZL』というブランドイメージは今もそのままですが、当時はSNSもまだまだで情報が少なかったためPETZLがまだまだ強かったところから、LEDLENSERに市場が傾いたように感じました。
正直なところ、光量とバッテリーの駆動時間の表記の仕方で『コスパが高い』と感じさせるルーメン戦争が始まり、PETZLは市場から押されてしまいます。
また、milestoneも最上位モデルTRAIL MASTER(MS:F1)のリリースから、独自の電球色の温かみのあるヘッドランプで確実にファンを増やしていきます。
10年前にはPETZLとBlack Diamond、GENTOSあたりが主流だったトレランにおけるヘッドランプの勢力図は特に2015年頃から少しずつ変化していったように思います。このルーメン戦争によって立場を追われることになったPETZLではありますが、圧倒的な技術と革新性は色褪せることがありません。
3、PETZLの修正
2019年9月にリリースされたSWIFTでPETZLは再び玄人からの支持を獲始めます。
SWIFTはリアクティブライティングが搭載されたヘッドランプではありますが、スマホとの連動をなくし、自動で光量を調整する機能を残しました。またMAX900ルーメンという当時の中では最上位クラスの高出力ができる機種として再び注目を集めます。
機能性と操作性、そしてどのブランドにも負けない100gという軽量性は他ブランドの約1/2レベルであったため、ハセツネなどに代表される一晩超えないレースでの上級者がこぞって使用していたように思います。このSWIFTの軽量性は今でも他ブランドとは一線を画すポジションと言えるでしょう。
4、ヘッドバンドへのこだわり
トレランにおけるヘッドランプはルーメン戦争に突入した以降、『ルーメン』×『バッテリーの持ち時間』×『値段』で総合的にコスパを評価するようになり、『ものづくり』や『モノ選び』の部分からコスパ競争に進んでしまいます。
当時から私はこのルーメン戦争は『道具を選ぶ基準にはならない』と勝手な持論を展開し、LEDLENSERの仕入れはしないと決めていました。そんな中、『技術と快適性』を磨き続けてきたブランドがPETZLだと信じています。

PETZLのヘッドバンドと軽量性へのこだわりは、快適性を生み出します。最上位機種の同じくらいのスペックで比べた時の軽さはやはりPETZLが1番軽くて、そのヘッドバンドの快適性が他ブランドとは全く違います。皮膚への接地ポイントのソフトさや軽量にするための素材のチョイス、重さと擦れを可能な限り排除するための選択のストイックさは他のブランドとの違いを生み出しています。それにより首や肩へのストレスを軽減させることで、長時間の着用においてもパフォーマンスを下げないように設計されています。
正直、市場ではLEDLENSER勢力が席巻していた2017〜2020年あたりでも、それらを仕入れることなくPETZLやmilestoneを仕入れ続けていたのには、モノづくりへのリスペクトや、ブランドへのこだわりが見られていたからです。
NAO RLの商品に行く前に長々と語ってしまいましたが、コスパ以外でこだわり続けるPETZL社の取り組みについてまずはぜひ触れていただきたい、モノを選ぶのもコスパだけではないということをまず知ってほしいと思って書かせていただきました。
※LEDLENSERが嫌いなわけではないので悪しからず。
PETZL NAO RLの機能性について
続いてNAO RLの機能性とスペックについてご紹介していこうと思います。
まずは動画をご覧ください。ここでは簡単な操作やスペックなどがビジュアルで入ってきます。
選ぶ上で大切なポイント
次に選ぶ時に気になるざっくりとしたポイントです。1番目に留まるのが軽さ。これはやはり際立ってます。最大出力は出せるに越したことがありません。同じ250lmの光量を出すとしても、キプチョゲがフルマラソンを4時間かけて走るのと、庶民が走るのとはわけが違うように、出力を出せる人がそれをセーブしながら使うことができるので、バッテリーのスタミナも持つわけです。
バッテリーの3200mAhは他ブランドの最上位機種と比べてもほぼほぼ同じです。3200〜3400mAhが一般的です。他ブランドであれば途中でバッテリーを1回変えなければならないことが多いですが、リアクティブモードがあることでNAO RLはこのバッテリーでもバッテリーを交換することなく10時間(冬じゃなければ一晩)持つスペックに仕上がっています。
商品名:型番 | NAO RL :E105AA00 |
重さ | 145g(バッテリー込み) |
最大出力 | 1500lm |
主要照射時間 | リアクティブモード弱(250lm):10時間 |
電源 | 3200mAh |
充電方法 | USB typeC |
充電時間 | 3.5時間 |
耐水性能 | IPX4(全天候型) |
バッテリーインジゲーター | 5段階 |
付属品 | ランタンにもなるポーチ付き |
予備機能 | デバイスの充電器もできるバッテリー『R1』 |
ロック機能 | あり |
その他 | リフレクターにもなるヘッドバンド |
スペック表
照射モード | カラーモード | 照射レベル | 照射力 | 照射距離 | 照射時間 | リザーブモード |
リアクティブライティング | 白色光 | 弱 | 250lm | 70m | 10時間 | 10lm 2時間 |
中 | 550lm | 100m | 5時間 | |||
強 | 1500lm | 200m | 2時間 | |||
スタンダードライティング | 白色光 | 弱 | 10lm | 10m | 80時間 | |
中 | 250lm | 70m | 5時間 | |||
強 | 900lm | 140m | 2時間 | |||
赤色光 | 点灯 | 2lm | 2.5m | 78時間 | – | |
点滅 | ※ | – |
PETZL NAO RL ヘッドランプレビュー
ここまで読んでいただきありがとうございます。愛すべきPETZL社の最上位機種 6年ぶりにアップデートしたNAO RLについてここから書いていきたいと思います。
1、1番驚いたこと

リアクティブライティングがめちゃくちゃ滑らかになりました。これまでのNAO+もSWIFTもリアクティブライティングモードで光量が変わる時は『あ、今変わった』感があって、それはNAO+よりもSWIFTの方が滑らかだったんですが、NAO RLは全くそれがない。
リアクティブモードであることを感じさせないくらいの滑らかさで、これを体験した時は思わず笑いが込み上げました。SWIFTの時に感じていたカクカク感が全くなくて、思わずメーカーさんへ連絡確認。こういうクオリティが上がってるところホント好きなのです。
一言で表現すると、一昔前のビデオがいきなりGOPROになった感じです。
2、やはり、軽さが際立ちます
このバッテリー交換なしで一晩超えられる系のヘッドランプと言えば、大体200gを切れば合格。それを大幅に割り込んで145gと全ブランドの中でも頭1つ抜きん出るペツルさん。ヘッドランプの進化は激しく、恐らく1〜2年したら他のブランドが肩を並べるスペックでバッテリー性能と軽量性を兼ね備えたモデルを出してくることが、容易に想像することができます。
しかしながら、リアクティブライティングのような機能がない限り、最新モデルのペツル最上位機種に追いつくことはなかなか難しいかなと思います。今回は6年半ぶりのアップデートということもあってしばらくはトレランのヘッドランプにおける最上位のヘッドランプの座に君臨し続けることでしょう。
3、操作性

これまでのNAO+やリアクティックプラス時のあのわかりにくさが解消され、特に何もなければボタン1つでリアクティブライティングモードに設定しておけば、途中で光量の調節も不要、余計なことを考えずに使い続けることができます。やはりバッテリーをセーブして長時間使おうとする他の機種と比較するとこのバッテリーセーブに関してが自動というのは非常にありがたい。
バッテリーを2本備え付けて何も考えさせないLEDLENSERのNEO9Rのように物理的に解消したヘッドランプもあるけれど、『いかに無駄を削ぎ落とすか』これはトレイルランニングの醍醐味であり、本質であると思います。これを体現しているのがNAO RLに他ならない。
操作性というこれまでの弱点を克服したNAO RLは、今後のトレイルランニングにおけるヘッドランプ市場での復権を大いに予感させます。
また、背後のランナーや特に車に自分のポジションを知らせることができる背面の赤灯。これは本当に真っ暗な夜のトレイルや街灯のない夜道を走る時の安全管理に非常にいいです。基本前しか照らさないトレランのヘッドランプですが、背後からの安全にも気を配ってくれます。
4、浮気をしない方はマストバイ
ヘッドランプって1回買ったらしばらく買い換えないと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、「ここがもう少しな〜」とか「思ったよりバッテリーもたなかったな〜」とか、道具が好きな方であれば気になるところがあれば買い換えるのがヘッドランプ。
特に最上位機種ではない2〜3番目の機種をメインのヘッドランプとして購入した方の多くが、後から買い直すという場面を何度も見てきました。最初はいきなりそれなりの値段とスペックのヘッドランプを買うことは躊躇われるかもしれませんが、向こう数年買い換える必要がないと思うと、商品のスペック等に対して決して値段が高いというわけではありません。特に前機種NAO+を購入された方の多くは他のヘッドランプに目移りすることなく使い続けていたのを見ていると、今NAO RLを購入してしばらくは使い続けると言うのが最もコスパがいいのかもしれません。
5、弱点
PETZLのヘッドランプの唯一の弱点ともいうべき『互換性』のお話。
最上位機種に対していうことではないというのを前提でお話させていただくと、バッテリーの互換性が乏しいということだけは今後PETZLさんにどうにかして欲しいなと思える問題かもしれません。
多分今回のアップデートはNAO+ユーザーにとって待望のアップデートだったと思います。他ブランドとのバッテリーの互換性が取れるLEDLENSERのようにまでは言いませんが、せめてNAO+ユーザーがNAO RLに乗り換えたりするときに同バッテリーの互換性が取れたりしてくれたらありがたいなと常々思っていました。リアクティックプラス→SWIFTでも同じことを思いましたし、同ブランド内でのバッテリーの互換性がもう少し出てくるとPETZLのファンはもっと増えるのではないかと思います。
ただ、この6年間でUSBの主流がtype Cになってしまったのだから、今回は仕方がないのかもしれません。
まとめ
今回はPETZL NAO RLの紹介をさせていただきました。
唯一無二の機能であるリアクティブライティングがトレランの本質とも言える『無駄を削ぎ落とす』ことを体現しつつ、バッテリー性能と重さを削ることに寄与していること、そしてその滑らかさと性能、そしてこれまでの弱点だった操作性が大幅に改善されたと言うことが伝ていれば本ブログの役目は果たせたかなと思います。
私の大好きなヘッドランプたち。よかったらこちらもご一読ください。