ローカットの登山靴を今まさにお探しの方、なぜローカットの登山靴を選ぼうとしているか考えたことはありますか?この文章を読み終えてから商品を選ぶと、選んだ商品により愛着が増し、購入した後の満足感がプラスされることでしょう。
大体の方が『なんとなく』や『周りの人がいいって言ってるから』や『動きやすそうだから』という理由だと思います。果たしてその前提である『なんとなくローカットの登山靴がいいのではないか説』を検証していきつつ、『私はミッドカットの方がいいかも』『ぼくはトレランシューズの方がいいかも』というところまで想像して選べると、購入後の満足度が変わりますので、ぜひチェックしていってください。
目次
ローカット登山靴とその他の登山靴の違いを知ろう

ローカットの登山靴は軽さと動きやすさ重視の方に
ローカットの登山靴は軽く、足首の関節可動域が広い(足首がよく曲がる)ため、動きやすいのが特徴です。また脱ぎ履きもしやすいですし、想像するとおり気軽に履けるので使い勝手がいいのが特徴です。足首が弱い(捻挫グセがあるなど)方は、『捻挫が心配』という方もいると思いますので、ローカットの登山靴がオススメ!と誰にでも言うつもりはありません。
ハイカットの登山靴はサポート重視の方
ハイカットの登山靴となると片足で600gを超えるものも出てきます。また足首が曲がりにくいので、膝から下を直角に固定したような状態で行動しなければなりません。捻挫の心配は限りなく少なくなります。基本的にハイカットの登山靴は耐久性も高く(もちろんお値段も)、アルプスなどの岩場でつま先だけで全体重をかけなければならない時などに、ガッチリしたソールで厳しい条件でもクリアすることができます。重たい荷物を背負った時の安定感はやはり捨てがたいものがあります。
ミッドカットはバランス重視の方に
ミッドカットの登山靴は、その中間のバランス型。ただし足首の曲がりやすさはブランドや商品によってかなり違います。足首が曲がりにくければ、歩きにくく疲れやすいので、基本的に動きやすいのが好きな方でミッドカットの登山靴を購入することを検討している方であれば、足首が前方向に曲がりやすいかどうかはチェックしましょう。横方向にさえ曲がりにくければ基本的に捻挫のサポートは十分と言えるでしょう。
ここまで読んできた方は気がつくと思います。
重さやサポート力については想像できると思いますが、足首が前方向に曲がりやすいかどうかは、動きやすさに大きく影響していますので、検討する際に必ず考慮に入れておきましょう。
固定概念を捨てましょう
違いを知った上で、次に考えて欲しいことは、一旦固定概念を外して考えること。

『ローカットじゃないとダメ』『ミッドカットの方が絶対にいい』『ハイカットであるべきだ』というような固定概念が1番邪魔です。なぜなら靴の違い以上に、履く人の体力・足の形・山の経験・個人の感覚というものが千差万別だからです。
だから私は『アルプス行くならハイカットですね』と勧めてくる店員さんは好きではありません。もちろんお店からしてみればハイカット登山靴の方が単価も高いし売り上げも上がるわけですが、選び手の気持ちとしては、必ずしもハイカットの方が合うとは限りません。
皆さんはTJAR(トランスジャパンアルプスレース)というイベントをご存知でしょうか?NHKなどでも度々特集されることがあるほど過酷なレースで、参加者は日本海をスタートし北アルプス・中央アルプス・南アルプスの山々を超えて太平洋まで415km走るという、人間とは思えないほどすごい人たちもいます。なかなか出くわすことはありませんが、参加者のほぼ全員がローカットのトレイルランニングシューズを履いています。

ですから、『アルプス=ハイカット』ではなく、選び手の運動経験、普段の運動歴、これから想定される使用方法、体の状態、などなど選ぶ上で考慮しなければいけないことはたくさんあります。
まずはローカットの登山靴が欲しいと思っているかもしれない皆さんに、漠然とローカットが絶対いい!という固定概念を1回捨ててから、改めて読み進めていただければ幸いです。
と、書いている私は完全にローカットが大好きなので、きっと皆さんの気持ちは理解できると思います。
ハイカットの登山靴を買ってほとんど履かなかった経験
完全に個人的な経験なのですが、私が山に目覚めた頃、最初に買ったのはトレイルシューズでした。その後経験を積んで「いざアルプスへ」と意気込んで買ったハイカットの登山靴、重いし足首曲がりにくいし、捻挫しにくい体だったし、ただただ動きにくい・・
もう15年近くも前の話ですが、当時は今のように個人で情報をたくさん発信している時代ではなかったため、「ないと思ってたところに雪渓が」なんてこともありました。そんな時はキックステップで登る、ハイカットの登山靴が便利に感じる時もありました。
ただ、もう、ほぼほぼ体が頑丈で、行く山の情報がSNSなどを通じてわかる時代で、想定される装備をしっかり持って行ける、便利な時代になってしまったので、ハイカットの登山靴はもう雪山以外での出番を完全に見失ってしまいました。
経験、時代の変化、道具の進化、さまざまな要素はありますが、向かう山の情報とバランスを考えて登山靴も選べるといいですね。
ローカットの登山靴とトレイルシューズ(トレランシューズ)の違い
一見見分けがつきにくいローカットの登山靴とトレイルシューズの大きな違いは2つあります。
1つはアウトソールと呼ばれる靴底のゴムの部分(地面と接する部分)の硬さです。
もう1つはアッパーと呼ばれるメッシュ部分です。
アウトソールの違い
安定性重視の登山靴、動きやすさ重視のトレイルシューズという構造になっています。
いわゆる登山靴というのは『安定』していることに重きが置かれています。あらゆる条件で安定するために、地面と接するゴムの部分は硬く、曲がりにくいのが特徴です。アルプス等の岩場などではつま先だけ引っ掛けて登らなければいけない場面があります。ソールが曲がりやすく不安定なシューズよりも、つま先だけに体重をのせても安定してくれる登山靴の安定性は非常に安心感があります。
これはローカット登山靴よりもミッドカット、ミッドカットよりもハイカットシューズの方がソールが硬い傾向にあります。想定される山の条件や荷物の重さなどによって、ソールは硬い方が総合的に安定することになります。

一方トレイルシューズのアウトソールは比較的曲がりやすい傾向にあります。
登山靴メーカーが作るトレイルシューズの中で生き残っている『LA SPORTIVA』(以下、スポルティバ)は、私も大好きなシューズブランドではありますが、スポルティバのトレイルシューズは比較的アウトソールは硬めに作られています。
それ以外のブランドのトレイルシューズは、もちろんモデルによっては硬いものもありますが、『走る』ことに対して特化して作られていますので、ランニングシューズほどではありませんが、曲がりやすいのが特徴的です。
また面白いことに、ヨーロッパブランドとアメリカブランドでもアウトソールの硬さに違いが出る傾向にあります。どちらかというと本場のアルプスを構える岩場を主戦場としたレースが人気のヨーロッパの方がアウトソールは硬め、広大なロングトレイルで比較的走りやすいアメリカ生まれのトレイルシューズはアウトソールが硬くない、というざっくりとした傾向もあります。
アッパーの違い
強度重視の登山靴、通気性重視のトレイルシューズという構造になっています。
ローカットといえど登山靴は岩場も想定して作られているため、岩と擦れる、岩につま先を当ててしまうくらいで靴の強度を落としてしまうと、シューズに対する信用も落としてしまいます。そのためアッパーと呼ばれる表面の生地に強度を増すために、基本的に加工が施されています。もちろんトレイルシューズにも加工はされるのですが、加工を入れすぎてしまうと通気性を落としてしまうため、どちらかというとトレイルシューズの方が強度重視の加工を外して通気性をアップしている傾向になります。
アッパーだけでなく、つま先周りの構造も強度を非常に高く保つ頑丈さを登山靴は重視しますが、トレイルシューズは頑丈さよりも一定の軽さを選ぶことが多いです。経験者でなければわかりにくいかもしれませんが、トレイルシューズはアッパーもさることながら、登山では考えられないくらいの距離を1度に行動したりするため、靴の摩耗も激しいです。
これらを総合的にバランスを取りながら、重さが決まってきます。
頑丈さと重さはどうしてもトレードオフの関係性になってしまっているのが現状です。
ローカット登山靴の選び方
ここまで色々と選ぶ基準について解説してきました。
ここからは本当にローカット登山靴を選んで間違いないのかについて、迫っていきたいと思います。

気軽に始めたい人で走らない人であれば、ローカット登山靴から始めるといいと思います。ミッドカットやハイカットは、ブランドにもよりますが重たいものも多いので、気軽に始めるにはまずはローカットが1番です。
防水モデルを選ぶべきか
次に防水モデルを選ぶべきかどうか、という問題があります。
基本的に登山のみで使用という場合は、ゴアテックス等の防水モデルを選ぶ方が多いです。突然の天気の変化がある山において『備える』ことが重要だからです。突然の大雨で気温が急激に下がった場合などは足先から冷えて低体温を招く恐れもあります。また、早朝などは朝露で足元が濡れやすいことも多いです。
また、雨の日用の靴として気軽に履けるローカットの登山靴を持っておきたいという方も中にはいますね。
防水モデルを選ばない方の場合は、『基本的に雨が降りそうな日は山に行かない』や、『濡れることより蒸れることが嫌だ』という場合が多いです。山歩きは平地を歩くのと比べて運動強度は高くなります。そのため汗もかきやすく、防水性能が高ければ高いほど蒸れやすくなります。
そういった点を勘案して防水を選ぶか、通気性のいい靴を選ぶかが分かれてきます。
ローカット登山靴の適正なサイズの選び方
ローカット登山靴の適正なサイズについても、ランニングシューズにおいても、適正なサイズの基準はどれも同じです。しかしながらしっかりと検討しなければならないこととしては、『ソックスの厚み』が全然違う場合があります。
まず、実際の数字を出して明確にシューズのサイズ感を公表しているランニングシューズブランド『ALTRA』のサイズ基準についてお伝えします。ALTRAが公表している数値というのは、足の実寸+1.3cm前後が『1番トラブルが起きにくい』という内容です。さまざまな研究データを元に、算出されていますので、全ての人に当てはまるかどうかは確実ではありませんが、一般的なサイズとしては非常によく計算されたサイズだと思います。
もちろん足の甲が高い、足幅が広すぎて窮屈、足の指が長すぎて曲がるポイントが合わない、陸上部出身なのでつま先までピッタリ当たってないと違和感がある・・などなど個別の感覚、条件を1度排除した場合に、理にかなった説明をされています。
靴という筒状の物体を地面から離すときに曲げる状態が生まれます。このときに靴の中の体積が一時的に狭くなります。この時に指が靴に当たるとマメができたりなどのトラブルが起きてしまうため、当たらないための空間を確保する必要があり、その空間の理想が1.3cmであるというデータです。
また、足の実寸は裸足で図ることがほとんどだと思いますので、登山靴を履かれる場合にはソックスの厚みも考慮に入れなければなりません。たかがソックスだと思われてしまいますが、厚手のものだと5mmくらいのサイズの違いは簡単に出てしまいます。ネットで買うしよくわからない!という方であれば、普段の運動靴(スニーカー)のつま先にどのくらいの余裕があるかを確かめましょう。
約1cmくらい空間があるようでしたら、少なくても0.5cmは大きいものを選ぶようにしましょう。ソックスを履いた状態でつま先に1cm以上の余裕があることが想像できるシューズを選べるといいと思います。
ローカット登山靴のオススメ5選
前置きが長くなってしまいましたが、ローカット登山靴のオススメ、それもネットで購入できる商品をメインに書いていこうと思います。
コスパで選ぶならコロンビアのセイバー4
2Eとややタイトなフィット感ではありますが、防水で10,000円を切る価格と、それなりの満足感を求める『気軽に履きたい』という方に最適なモデルです。足幅が広め、または足の甲が高めの方は別のモデルを選びましょう。
見た目も重要な方はオンのクラウドベンチャーウォータープルーフがおすすめ
濡れた岩場や雨天時の泥土等には若干弱い部分もありますが、主に晴れた日に使用される気軽に始めたい方で見た目も重要という場合は最適な1足だと思います。また、タウンユースとしても優れているため、雨の日の普段にも兼用できるのが嬉しいですね。
頑丈さと路面での滑りにくさ、汎用性の高さが際立つスポルティバのアカシャ
トレイルシューズとして2016年に開催されたTJAR(トランスジャパンアルプスレース)で優勝したレジェンド望月将吾選手が着用したモデルとして知られています。日本海から太平洋までの415kmを岩稜帯を走るという過酷な環境でも耐えられるモデルです。運動経験が豊富な方でアルプスを目指して山歩きを始める方におすすめです。足幅も普通〜広めなので足に馴染みがいいです。
ベーシックなカラーで選びやすくコストパフォーマンスに優れるメレル モアブ2
メレルを代表する履きやすいシューズとして選ばれています。
足のトラブルが多い方、指先が窮屈に感じている方はアルトラ ローンピーク5
こちらは防水モデルもありますが、防水モデルよりも圧倒的に支持されているのがメッシュタイプモデル。また、トレイルシューズになるので、登山靴のように硬めの靴底ではないため、岩場などのトラバース(横切ること)には多少弱い部分もありますが、トータルバランスで非常に優れています。筆者も愛用しており、この履き心地を得てしまうと他のシューズが履きにくく感じてしまいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はローカットの登山靴の選び方、選ぶ基準、ミッドカットやハイカット登山靴、トレイルシューズなどとの違いについても選択肢に入れながら書いてみました。
走らない、安定性と気軽さ、普段履きのしやすさなども考慮するとローカットの登山靴という選択肢はこれから登山を始めようという方に最も適した選択肢だと思います。また、防水か非防水かについてもそれぞれのメリット・デメリットも考慮しながら選んでいただけましたらと思います。