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獲得標高と累積標高の違い 登山/トレラン初心者が絶対に知るべき『標高』の概念

トレイルランニング初心者の方、また中級者くらいの走力がありながら知識は初心者という方、聞いたことはあるけれど、あまり意識していないという方も少なくないはず。できればこの『標高』という概念はとてもとても重要なので、ぜひこの機会にチェックしていただければと思います。

この『標高』を中級者・上級者がどのように意識しているかを知るだけで、トレイルランニングにおける『力を入れるところ』が見えてくると思います。

獲得標高と累積標高の違いとは

『トレイルランニングのレースに出場してみよう』や『友人とトレーニングで山を走りに行こう』といった時に会話に出てくる『累積どのくらい?』中級者くらいの方が上級者と一緒に山に行くときに1番気にする言葉です。

一言で言うと、現在は獲得標高≒累積標高の意味で使われています。

初心者の方にもわかりやすくこれらの言葉について解説していきます。

獲得標高はコース上の最高地点からスタート地点の標高を引き算したものを指します。つまり私の家の近所にある『高尾山』〜『城山』でいうと高尾山の標高が599m、城山の標高が670mなので、獲得標高でいえば71mということになります。図で説明しますね。

出典:高尾登山鉄道

この高尾山〜城山の間には1度下って一丁平を経由し、登り返すセクションです。画像で表してみるとこのようになります。ちなみに画像の作成に使っているGAMIN CONNECTはガーミンユーザーじゃなくても登録さえすれば無料で使えるのでオススメです。

上記の緑色の線で、V字になっているのがルートを横からみた時の断面図です、1度下って登り返しているのがわかりますね。この高尾山頂〜城山間の獲得標高は高尾山頂の599mから1度491mまで108m下ってから城山山頂の670mまで登ったことになります。単純に高尾山頂〜城山間での獲得標高は約70mですが、実際には108m下って、179m登ったことになっています。(正確な高尾山頂にポイント打ててないので誤差が出てますね)
つまり獲得標高=70m、累積標高=179mという言い方ができます。

特にトレイルランニングや長距離を縦走する人について、この1つ1つの獲得標高はほとんど意味をなさなくなってきています。いちいち計算していられないので、トータルでどのくらいの『登り』の合計があるのかを知りたいという気持ちから、現在では『獲得標高≒累積標高』というイメージで使われています。『累積どのくらい?』という言葉をみんな使っています。 

最近では、トレーニング後にSTRAVAで表示される『獲得標高』も実際は『累積標高』のことですし、東京オリンピックのロードレースにおける獲得標高も「4865m」と累積標高の意味で使われていたりします。

時代の変化と共に言葉の定義が変化することはよくあることです。なので、獲得標高がどのくらいで累積がどのくらい・・なんて計算はトレイルランナーには不毛な話なので、

『累積どのくらい?』

と短い言葉で意思疎通が取れた方がスマートだと思います。ぜひ初心者の皆さまも自分が歩いたり走ったりするルートの『登り』の合計である累積標高という概念があるということを覚えておいてください。

初心者でも登りやすい山、ハードな山は累積標高でチェック

海抜0mから2000mの山を登るのと、1500m地点の駐車場から2000mの山を登るのだと、後者の方が楽そうなイメージが湧きますよね。これが全て直登であれば、前者は累積2000m、後者は500mということになり、単純に計算すると4倍も大変さが変わってきます。

初心者でも歩ける / 走れる累積標高の目安は600m

登山の初心者であれば累積標高で600mくらい歩けば、お腹いっぱいになるくらいの運動強度だと思います。東京にお住まいの方であれば想像できるかもしれませんが、高尾山口駅〜高尾山〜城山の往復で大体そのくらいです。

トレイルランニング初心者も、概ね登山の方と同じくらいの距離・累積標高を走り続ければ、かなりの疲労を感じます。登山と違い、トレイルランニングは『走る』というイメージが強いので、登りで頑張りすぎないことが長く走る上での大きなポイントですね。

挑戦的な累積標高は1200mを目安に

富士山の5合目については約2300〜2400mくらい(登り口にもよります)です。
富士山頂はご存知3,776mになります。約1300〜1400m登ることになりますね。なので、もともと体力がある方は別ですが、富士登山はそれなりに高い運動強度になることが想像できますね。(富士登山はほぼほぼ登りだけなので単純計算しています)

トレイルランニングのトレーニングでも累積で1200mというと、それなりにハードなコースであることが想像できますよね。この『累積標高』について、どのくらいのイメージが湧くかが『自分の体の使い方』と関わってきますので、できれば日常からこの『累積標高』について意識してトレーニングすることが重要です。

トレイルランニング中級者以上が意識しているポイント

トレイルランニングもある程度レースにでたり、トレーニングを積んでくると、走る距離+累積標高を見ると自分のゴール予想タイムが想像できるようになってきます。そうすると、その行動時間や運動強度に合わせて必要な補給食の量を算出することができたり、余分な荷物を持たなくてよくなってきます。

先程の『累積どのくらい?』という会話にも表現されるところではありますが、そのくらい『累積標高』というものを中級者以上は意識して山に入っています。

トップ選手について

皆さんはトレイルランニングのトップ選手を見たことはありますでしょうか?ものすごい運動強度で行動しているにもかかわらず、驚くほど荷物が少ないことがあります。途中のエイド(休憩ポイント)等でサポーターが荷物を渡してくれたり、お世話をしてくれることもありますが、彼らはどちらかというと、自分にとっての『足る』を知っています。

その時の気温や気候、風、走るエリアの標高などを考えて、自分に必要なものをよく知っています。登山者からしてみたら『あんな軽装で山に入って・・』と思われることもある場合もありますが、彼らにとっては必要なものは背負っているし、足りていることが多く、日頃から山にこもっている人と一般人を同じ物差しで比べて批判するのも少し違和感がありますね。

少し話が外れてしまいましたがトップ選手は何度も何度も山に入った経験から、自分の疲労度を算出し、行動時間をイメージできる能力を持っています。

我々初心者〜中級者に求められること

初心者、中級者に求められることは、山に入るときに『データ』を取るといいと思います。自分が入る山の行程、距離、累積標高、登りやすさや下りにくさ、もちろん山の表情によって変化するそれらの情報をデータとして蓄積し、自分にとっての行動時間をイメージできるようになっていけると、荷物が減り、より快適に山に入るための準備ができると思います。

アプリで累積標高を事前に出してトレーニングする方法

先ほど高尾山〜城山という山の地図でも出しましたが、GARMINさんが提供しているGARMIN CONECTというアプリは非常に優秀ですので、ここでご紹介したいと思います。パソコン限定ですが、事前にルートを設定し、累積標高も自動で計算してくれます。また、Googleマップ等とは違い、自分でポイントを打たなくても、ある程度人が登っているコースを瞬時に案内してくれます。ルートが多い時はポイントを少しドラッグ&ドロップするだけ、自動でルートを修正してくれるので、とってもオススメです。

それでは早速画面を見ていきましょう。まずは https://connect.garmin.com/modern/ にアクセスしましょう。左のダッシュボードから『トレーニングと計画』→『コース』を選ぶとマップの画面に遷移します。

マップの画面に来たら、最初はアメリカの地図が表示されるので、検索窓にいきたいコースの出発点を入力しましょう。日本語で問題ありません。
今回は高尾山と入力して検索してみました。検索が終了したら『コースの作成』を押して次に進んでいきましょう。

コースタイプの選択から、アクティビティを選択しましょう。今回は『トレイルラン』を選択しました。お近くの山でやってみてくださいね。

スタートする地点をクリックします。ここでデフォルト設定になっている『Popularity Routing』を選択しておくと、ルートをいちいちトレースしたりしなくて大丈夫なので、とても便利です。その後は通りたいところをポチポチ押していくと勝手にいい感じにルートをトレースしてくれます。

直感的に操作できるので難しくありません。

ルートを選ぶと距離や高度上昇(累積標高)と高度下降が出てきますね。

もし、ガーミンユーザーであれば、この画面から『デバイスへ送信』ボタンを押せば時計に飛ばすことができますし、ガーミンユーザーでなければ、『・・・』ボタンを押して『GPXデータ』のダウンロードを行うことができます。これらの地図データをスマホやGPSウォッチに入れておくと、迷ったりルートから外れてしまったときに安心です。時計によってはルートから外れたらアラートもかけられます。

まとめ

獲得標高と累積標高は厳密に言えば違いますが、ほぼほぼ今はどちらの言い方をしても累積標高のことを指していることがわかりました。

また、中級者以上が使っている『累積どのくらい?』とは、自分たちの行動時間を予測する上で山に入る際に確実に知っておきたい情報になります。『初心者だから知らなくていい』ではなく、初心者だからこそよく頭に入れて、自分の力で行動する場合に距離と累積標高でどのくらいの時間がかかりそうかをイメージしなければなりません。

時間が変われば気温も変わりますし、明るさも変わって必要装備が変化します。初心者だからこそ、間違いなく『標高』について知っておくべき概念ですので、この点は間違いなく意識しておいてください。

馬場 保孝

馬場 保孝

ディレクター、音響運営なんでもお任せください。 イベントの便利屋さんです。最近WEBも頑張ってます。

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