レペティション(repetition)は「反復」「繰り返し」を意味する言葉で、全力疾走とレスト(休憩)を繰り返すトレーニングのことを言います。今回はレペティショントレーニングの目的、効果ややり方、メニューについてご紹介したいと思います。
レペティショントレーニングとは
ランニングにおけるレペティショントレーニングとは、スピードを強化したり、心肺機能の向上を目的としたトレーニング方法の1つです。1本1本全力で走るトレーニングで、ランナーの間では「レペ」「レペ走」と呼ばれることもあります。
『全力疾走→レスト(休憩)』を繰り返します。似たトレーニングにインターバルトレーニングがありますが、インターバルトレーニングは1本目から全力を出し切ることはありません。慣れてきた場合、概ね95%くらいの力を出し、本数を重ねることによってレースペース、あるいはそれ以上のペースに体を慣らしながらスピードとスタミナを強化していきます。
レペティショントレーニングはそれに対し、完全に全力を出し切ります。2本目以降のことは考えずに常に全力を出し切ることによって、最大のスピードを強化します。なかなか全力疾走をすることは日常においてないと思いますが、速く走れた上でゆっくり走れることは、それだけ体に余裕も生まれます。
具体的に言えば10kmを走るのに1km3分で走ることができる人と、1km5分で走ることができる人がいたとします。1kmを6分で走り続けるのに余裕があるのは明らかに1km3分で走れる人ですよね。1km3分で走りたいかは別として、楽に走れるようになるためにも、スピードは出せるに越したことはありません。
レペティショントレーニングの目的・効果
レペティショントレーニングの目的と効果は、インターバルトレーニングと重なる部分もあります。早速見ていきましょう。
1、スピードの強化(全力を出し切る)
最大の目的はスピードの強化にあります。上記でもお伝えしましたが、インターバルトレーニングとは違い、決められた距離に対して全力を出し切ることが目的です。インターバルトレーニングと違って、レストもしっかり長めに取ることで、2本目、3本目と高いスピードを維持しながら出し切ります。
2、心肺機能(VO2MAX)の向上
体内の細胞小器官であるミトコンドリアが酸素を取り込み、脂肪や糖を分解してエネルギーを作り出します。酸素は取り込めれば取り込めるほど、より多くのエネルギーを生み出すことが可能なため、酸素を体内に取り込むことができる能力を向上させることが、ランナーの心肺機能を高めることを意味します。
VO2MAXは、体重1kgあたり1分間で取り込める酸素の量のことを言います。レペティショントレーニングは心肺機能を強化する上で、高い効果があります。詳しくはこちらのブログでもご紹介しています。
3、乳酸処理能力の向上
VO2MAXの向上と重なる説明にはなりますが、全力を出し切ることによって、無酸素状態での運動になります。ミトコンドリアは酸素を取り込んでエネルギーを作り出しますが、この無酸素状態では糖を分解してエネルギーを作り出します。糖を分解した時に発生する乳酸は、疲労物質のイメージが強いですが、再びエネルギー源として活用することができます。
4、筋力強化・スピードの維持
レペティショントレーニングは高出力の運動になるため、筋力もアップします。特にレース後半などで足が動かなくなった経験がある人には伝わりやすいと思いますが、スピードを維持した時に耐えられる筋力がつくことで、筋力的なスタミナがアップし、結果的にスピードを維持できる能力が高まります。
レペティショントレーニングはレストが鍵
レペティショントレーニングに取り組む上で、鍵になるのがレストです。
しっかりとレストを入れないと、2本目、3本目と繰り返す際にスピードが出なくなります。インターバルトレーニングとの大きな違いとして、決められた距離を最大のスピードで走り切ることが目的ですので、しっかり休んでリカバリーしましょう。体を無酸素状態に追い込み、血中に発生した乳酸を再びエネルギーとして活用する能力(乳酸処理能力)を高める上でも、しっかりとしたリカバリーはとても重要です。
乳酸処理能力を高める上で重要な指標『AT値』についてはこちらを参考に
また、1本1本の走る質を高めるためにも、設定ペースは特に重要です。自分の全力が大体どのくらいなのか、レストをしっかりと入れて次にどのくらいのペースで走れたのかを確認するためにも、GPSウォッチを用意することをオススメします。
レペティショントレーニングのやり方
レペティショントレーニングのやり方は基本的には全力疾走→レストになります。
主に市民ランナーでいうと10km、ハーフマラソン、フルマラソンに出られる方が多いと思いますので1000mを基本に考えていいと思います。1000mしっかりと走った後、体がしっかりと回復するまで休んでから次のスタートを切りましょう。
また、全力と言っても、1000mを走り切れる全力を指しますので、間違っても100m走のようなペースで走って残り900mがヘロヘロにならないように、1000mの全力を単位として考えて下さい。
本数は3本〜5本を基本とし、ケガ防止のためにも多くても5本までに留めておきましょう。
休憩は15分〜20分を目安に取り、ゆっくり歩いたりストレッチを入れるなどして体を休めて下さい。次の走り出しのためにも、長時間座っての休憩は控えましょう。
途中で潰れないために、自分が走ることができるタイムから、ペースを設定できるVDOT表も要チェック
レペティショントレーニングの注意点
レペティショントレーニングの注意点は、体の負荷が大きいためケガの予防に努めましょう。しっかりとしたウォーミングアップを行い、体が全力疾走に耐えられるように、気持ちの準備も同時に行いましょう。朝起きた時から、食事や水分の調節など準備が重要です。
レペティショントレーニング終了後は、ゆっくりとダウンジョグを行いましょう。しっかりとストレッチをしたり、水分・栄養補給につとめ、アイシングなどで体の疲労を溜めないために最善のケアをすることが重要です。パフォーマンスを維持、向上させていくためにも、とにかくケガをしないことが1番の注意点です。
まとめ
今回はレペティショントレーニングについてご紹介しました。レペティショントレーニングのポイントは全力を出し切ること、鍵になるのは『レスト』です。また1番重要なことは『ケガをしない』ことです。
効果については、スピードの維持・強化、心肺機能の向上、乳酸処理能力の向上など、ランナーにとっての『スタミナ』の部分が強化されます。
基本的に1000mで行い、レストは15分〜20分しっかり休み、3本から5本を目安に全力疾走しましょう。とにかくケガには気をつけて、パフォーマンスを維持・向上させていきましょう。