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『THE FIRST TRAIL』トレイルランニング大会制作の現場から(前編)

今回は、大会制作について少しでもリアルな記事を書こうと思い、先日書いた『マラソン大会(イベント)制作時の頭の中身を公開』も考慮しつつ、制作の現場についてお知らせしたいと思います。

冒頭でお伝えしますが、少し特殊な例かもしれません。どちらかというと、組織でというよりも「個人」に近い団体での運営になるからです。とはいえ、それなりに盛り上がっていけば良しということで、書いていきたいと思います。

1、コンセプトの決定

今回の話は、昨年(2023年)のお話です。『TRAIL OPEN AIR DEMO(以下、TOAD)』というトレイルランニングを中心としたアウトドアブランドが約40社、70ブランドくらい集まるイベントの集客を強化して欲しいという要望から、レースを作りましょうということで話がスタートしました。

TOADは私も過去9回のうち8回は実行委員として機能してきました。一昨年、主催団体の会社を辞めたことで昨年からは外注のイベンターとして関わっています。

2023年のTOAD会場

まずは現状の分析から

大会制作をする上で、1番重要なことは『赤字を出さない』ことです。ここは前回のブログでも書きましたし、口を酸っぱくしてお伝えしますが、膨大な労力と時間を投資して赤字を出してしまうと、よっぽど他でメリットがない限り、「来年がない」ことになります。

2023年1月20日に許可関係が取れたこのレースの開催日は、4月1日でした(2024年は4月6日)。
翌日には青梅高水国際トレイルラン(約2000人〜2500人)が控えており、我々の会場と同じで、許可関係でさまざまなご協力をいただいています。

そして、同じく翌日には五日市(青梅と八王子の間くらい)でハセツネ30(約2,000人)が開催されていました(2024年は1週ずれました)。どちらも長い方は約30km、青梅高水は15kmのカテゴリーがあり、距離だけで話すと、トレランとしては初心者から中級者くらいのカテゴリーがイメージされています。
レースの参加者層はもちろん上級者もたくさん出場しており、特にハセツネ30というレースは日本山岳耐久レース『ハセツネ(約72km)』出場への切符がかかっていますので、どちらかというと本気の人が多い印象です。

という、東京においてはトレランの多くの需要をこの2大会が飲み込んでいくような週末で、場所もほぼ丸かぶり。東京マラソンと同じ日にマラソン大会を企画するレベルで、マーケティング的には絶対に被せない日に大会制作を行うことになりました。

大会制作のコンセプト、とっても大事な気がしませんか?

トレランで2000人規模の大会って、ほぼMAXなんですよ。

運営の負担においても、集客においても、山岳エリアの環境保全においても、周囲との調整においてもほぼMAX。青梅高水、ハセツネ、FUJI、など名だたるレースでも約2000人がMAX。どの大会もほぼほぼ2000人がMAXで国内の大会は運営されてきた歴史があります。

そんなレースがほぼ同じ場所で2つ集まる4月最初の土日。
そしてレース主催者仲間情報だとコロナ明けのレースでは、30%くらいの集客の落ち込みを耳にしています。

我々が新規でレース制作をするには、『これらとは差別化したコンセプトで参加した方がメリットがあると、事前に想像させること』がとてもとても重要です。

また、TOADに出展するブランドの人たちにも、参加者の客層においてメリットを感じてもらうことも同時に達成しなければなりません。TOAD(トッドって読みます)の例年の客層から考えると、青梅高水国際トレイルランの参加者、またはメーカーや主催者側が発信する情報に反応することができた中級者以上の「すでにトレランに親しみがある」人が来場者のほとんどを占めていました。

道具が好きな人やメーカーの情報を漁って新しい情報を求めている方は、放っておいても集まるので、新規顧客として、「トレラン初心者」をターゲットにすることにするとともに、間口を中級者や上級者も歓迎するというところに広げることで決定しました。

トレランレースの初心者が最初に参加する時、15kmってめちゃくちゃ長いと思います。ですが、トレランはいつからか『長く走れることが正義』のように、メーカーもレース主催者もどんどん距離を長くしてきた歴史があります。(もちろん全然悪いことではありません)私もレースに注目して見てきたのは約10年ちょっとですが、10年前とは比べ物にならないくらい長距離のレースがたくさん増えました。

その背景には、メーカーとしては長距離になればなるほど必要な道具にこだわりが出てきたり、必需品(レースでは必携品と呼んだりします)が増えるなど、消費に繋がるからです。レースの主催者側としても、距離が長くなればなるほど参加費が上げられるので、主催者も増えて市場が拡大してきたように思えます。

「やってる人」は勝手にどんどん進化し、長く走れるように適合していきました。もちろん、たくさん走れたり長く走れることはとても素晴らしいことだったと思います。

しかし、そこについていけない『時間が確保できない子育て中の人』や、『山の15kmなんて長すぎて興味すらわかない人』等は、完全に取り残されてしまったように感じます。そして、ある程度目的意識を持って取り組み、その目標が達成された後に辞めてしまったトレラン卒業生も多くいたように思います。

それらの方が感じているハードルを取りのぞくことができるレース、近場で日帰りできる環境で、誰でも参加できるようなものを今回のメインコンセプトとしました。

THE FIRST TRAILのコンセプト

THE FIRST TRAILは、『今日が初めてのトレランです』という方でも、上級者でも同じ空間で走ることができる、1番やさしいトレイルランニングのイベントを目指しています。

だから、走れる格好でさえいてくれれば、トレランシューズなんてなくても参加できる、トレランザックだってなくてもOK、1人でも参加できるし、チームで参加した方が心強い。そんな人たちを受け入れられるようにデザインしています。

リレーで参加することで仲間と一緒に参加しやすい

もちろん、子育て中の方でも参加できる42.195mの徒競走(ひよこの部)や、親子リレー、小学4年生以上になったら大人とも同じレースに参加できるなど、レベル・環境を問わずにアットホームな雰囲気を作っていきます。隣には鉄道公園もあるので、レースが終わった後でも遊べる環境があるので、1日楽しめます。

本気の人や自分の練習にという方は、ソロでエントリーし、間近でトップ選手を追いかけながら走ることも可能です、後述しますが、そんなゲストランナーも揃っています。

そして、コースを周回にすることで、常に周りに誰かがいる環境で恐怖心もなく、通常のレースでは味わえないトップ選手に抜かされる経験もできます。

2、デザイン・イメージの決定

レースのコンセプトを思い切って決めた後は、それがわかってもらえるような『デザイン』そして『イメージ』の力が必要です。

上記で書いたコンセプトをビジュアルで表現できるのが『デザイナー』さんの力です。

子どもも一緒に参加してもらえるように、敢えてキャラクターでお願いしました。うさぎもカメも仲良く同じ空間で走ることができるを表現してくれました。2024年(第2回大会にアライグマとリスが追加されました)

また、キッズのためだけのレースだと思われたくもないので、そこは『ゲスト』の力を借りることにしました。

ハセツネ(日本山岳耐久レース)でチャンピオンにもなっている三浦裕一選手をはじめ、長らくトレランの世界で活躍してきた星野由香理選手、最近ランニング・トレイルランニングをSNSから盛り上げてくれる、かんちゃん、さやぴ、の2名で親やすさを追加。

初めて参加する人だけではなく、トップ選手と同じ空間で走ることもできます。

3、協力業者の募集 / スタッフの募集

そして、イベント制作にとって重要な内容。いや、何事においても大事な人事です。

協力者は、上記のようなゲストももちろん含みますし、レース運営を当日だけ手伝ってくれるボランティアさんなどももちろん大事です。

前回のブログでも触れましたが、人はめちゃくちゃ大事です。

1、デザイナーさん
2、地元の大先輩たち(許可関係)
3、計測会社(可能な限り安価でお願いできるところ)
4、イベントレンタル会社
5、MCさん
6、DJさん
7、メインスタッフ(救護含む)
8、ボランティアさん
9、ゲスト
10、体操のお姉さん
11、カメラマン

イベントが大きくなると、関係団体がとてつもなく膨らみます。特にスタッフを地元の団体にお願いしたり、人員が増えれば増えるほど、人を管理する労力が膨らんでいくことでしょう。今回は小規模イベントのためその辺はかなり省略できています。ざーっと声をかけていってとりあえずスケジュールを確保してもらいます。(もちろん順不同)

4、コースや会場のレイアウト

今回のコースは、許可が取れている青梅永山運動公園から、『周回』できるコースで、接触せずに取りやすいコース、長すぎると初心者だと辛いので約2kmでアップダウンに富んだコース設計にしています。

会場のレイアウトはTOADと調整しながら決定していきます。

5、広報・広告

大会制作の前半部分は、この広報・広告までかなと思います。

大会制作は、大きく分けてエントリー開始されるまでの前半と、エントリー締切後の後半とに分けられるかなというのが肌感覚です。前半はとにかく早ければ早いほどエントリー期間を長く取ることができますし、締め切りが早ければ早いほど後半戦を楽に戦うことができます。

だからまずはこの『エントリースタート』までをいかに早く行い、広報活動を広げられるかが重要になってくるかなと思います。

広報については、今回は以下の3つがメインになると思います。

1、HP制作
2、口コミ(SNS含む)
3、広告

かけられる時間も予算も初回はないので、ほぼほぼパワープレーになってしまいました。メーカーなどからスポンサー費をもらっている場合は別ですが、トレランレースで初回からお金を出す個人運営の大会はほぼ皆無です。では順番に見ていきましょう。

1、HP

こちらは私が持ちうるレベルの知識と、昨年までのTOADの画像をいただいてスピード重視で簡単に制作しています。恐らく、大会を作ろうと思って呼びかけると誰かしら得意な人がいるのではないかと思います。大会の情報が全て集約されているホームページはなくてはならない存在です。

RUNNER’S HIGH ではスピーディなイベントホームページ制作ができます

2、口コミ(SNS含む)

集客する上で外せないのが口コミです。
例えが適切かわかりませんが、「うちのラーメン美味いから食べてよ」と呼びかけ続けるよりも、「あのラーメン屋さん美味しいらしいよ」と言われた方が行ってみたくなるのは世の常。広く知らせる広告はとても大切ですが、知り合いから知り合いに呼びかけてもらったり、『どんな意図』で大会を作っているのかなどを、伝えることはとても大切です。

今回は、スタッフチームに2名、SNSを素晴らしく運用してくれる方がいたので、ほぼほぼ丸投げし、私は必要になりそうな情報を大会HP内のブログにちょこちょこアップしています。

3、広告

自分たちの持ちうる手が届く客層や範囲は限定的です。
そのハードルを飛び越えて情報を伝達してくれる広告はとても重要な要素です。広告は費用対効果を最大化することが重要で、使う媒体などによって大きく変わってくるでしょう。

ランナーの多くが比較的SNSをやっていることがあるので、今回はSNS広告(Facebook、Instagram)に力を入れることにしました。理由としてはすでに興味があることや年齢、居住地域などでターゲットが明確になっているのと、初心者でもわかりやすく情報を見ることができるからです。

規模感が大きくなればなるほど広告媒体の幅は広く、投下する予算も莫大になりますが、今回の目標としては「赤字を絶対に出さない」ことが目標なので、なるべく効果が最大化するように広告をかけていきたいと思います。(私は広告会社の人間ではないので最大化できるかはわかりませんが、考え方については書きたいと思います)

この広告についてはまた改めてブログで更新したいと思います。

まとめ

今回は大会制作の前半部分。エントリーを締め切る前までの部分について書いていました。

今回は許可関係は地元の大先輩達が全部やってくれたのでやることはありませんでしたが、コンセプトの決定、デザイン・イメージの決定、協力業者の募集・スタッフの募集、コースや会場のレイアウト、広報・広告までを書きました。順番にやっているかというと、ほぼほぼ全部同時進行で行っています。

例えばデザインイメージをデザイナーさんに振ってる間に他の関係業者さんに依頼を全てかけて、HPのたたきを作ってスタッフ募集までかけています。デザインが決まった後はデザインイメージをHPに張り付けながら、付加したいイメージをゲストで追加できるように声かけ、エントリースタートなど色々です。

やることは多岐にわたりますが、1つ1つ分解していけば落ち着いてこなしていけると思いますので、参考にしてみてください。

馬場 保孝

馬場 保孝

ディレクター、音響運営なんでもお任せください。 イベントの便利屋さんです。最近WEBも頑張ってます。

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