コラム

マラソン大会(イベント)制作時の企画・デザイン・運営など

大会制作歴11年目です、今回はマラソン大会を制作する時に、私が考えていることを書き出していこうと思います。なぜ、書こうかと思ったかというと、大会を始めたころはサポートしていただいている方への情報共有が全然できずに、頭の中身を出してくれとよく言われていたからです。

大前提として、ここで書く「マラソン大会」は、交通規制を伴うような大規模なものではなく(役所やら警察の絡みが出てくると膨大なので)、私有地や河川敷及び比較的許可取りが簡易な地方大会レベルの内容で書いています。また、マラソン大会に限定せずイベント全般に使える内容ではないかと思います。では早速見ていきましょう。

全部で20,000文字くらいあるので、読む時は気合い入れて読み進めてください。

マラソン大会制作1:スケジュール管理

マラソン大会を制作するにあたって、何人で作業するのかにもよりますが、大規模イベントでない限り、多くの情報を管理する主催者(運営責任者)は1人であることが多いかと思います。もちろん規模が大きくなるにつれて分業できるのがベストです。

まずは色んなことを人に任せるためにも、設計図を書く必要があります。
ガントチャートと呼ばれる『いつまでに何をしなければいけないか』を可視化できるものを作っておくと、それぞれの項目の締切日にそれらが完了しているかどうかをチェックすることができて便利です。

集客したい人数によるけど3ヶ月は最低欲しい

マラソン大会を行う上で、何が1番重要って、集客です
それぞれの参加者が参加費を出し合って成り立つのがマラソン大会なんです。だから目標の参加人数目指して主催者は先にお金を払ってリスクを取ることになります。

これが行政が運営する大会のように、担当者の人件費が税金で賄われていたり、企業のためのイベントであればなんとかなると思います。最悪足りなくても行政が負担したり企業が負担したりして成り立たせられます。

しかし、一個人だったり、任意団体で大会制作を行うのであれば、赤字を出した時に誰かが負担しなければなりません。人間関係を円滑にするためにも『絶対に赤字は出さない』という覚悟でやる必要があります。

そして、赤字を出さないためにも『集客』は本気でやらなければいけません。なぜなら赤字を出した大会を来年もやりたいと思える人っていますか?という話です。今年は赤字でも来年黒字化できるならいいと思える場合はありますが、赤字を出さないためには『募集期間』が非常に重要になってきます。

集客期間が長ければ長いほど、エントリーしていただける機会は増えます。もし同じ日に家族の予定を先に入れてしまっていたとしたら、その時点でその大会にはエントリーできなくなります。

つまり、エントリーの開始が遅れることは『機会損失』を意味します。

だから、大会を作り始めたら、可能な限りエントリー期間は長めに取るように設計できる方が、最初はいいと思います。参加者が十分集まって安定してきたら、エントリー期間を短くしてプレミアム感を出したり参加費を上げたり、主催者の裁量で如何様にもできますが、最初はなるべく長い方がいい。それが募集期間です。

計測会社によりますが、『いつまで』募集を受け付けられるかも大事な要素です。
というのは、参加賞を決めたり、受付を事前郵送で対応したいなどの場合によっては、遅くとも1ヶ月前くらいには募集を締め切る必要があるからです。特にコロナ禍の時などは多くの大会が事前郵送で受付を対応していました。

人数を集計して当日の参加方法などの印刷物を制作して、問い合わせが増えないためにも2週間くらい前までには事前郵送を済ませます。そのためにはやはり1ヶ月前には募集を締め切っておく必要があります。

エントリー開始までの準備に1ヶ月かかったとして、エントリー期間が最低1ヶ月取れるのが『大会制作は少なくても3ヶ月必要』な理由です。

絶対に抑えたい人はなる早で声をかけよ

大会制作が慣れてくると、一緒に仕事をしたい人ってだんだん決まってきます。よかった人にはぜひリピートしていただけると、大会制作がだんだん楽になってきますし、打ち合わせの回数や時間もどんどん短縮されていきます。

だから、大会の開催が決まった時点(許可取りが終わった時点)で、私は以下の方々に声をかけています。

・MCさん
・DJさん
・PAさん(特殊ですが私は自分でやります)
・救護チーム
・デザイナーさん
・協賛企業さん
・ボランティアさんの重要人物
・計測会社さん
・レンタル会社さん

など、絶対に力を借りなければ大会制作が立ち行かなくなってしまう人のスケジュールをいの一番で抑えることは何よりも重要です。もちろん、今回のようなタイトスケジュールの場合は、許可取りが終わる前から声をかけます。許可が取れたら協力をお願いしますと。

中でもデザイナーさんを真っ先に抑えます。
詳しい理由は後述します。

開催日の決定は超重要

大会の開催日を決めるときに、自分たちの都合だけで決めてしまってはいませんか?
もちろん会場の都合だったり、関係者等の都合だったり、さまざまな調整事項があるのも事実。だけど、開催日は、ターゲットの参加者層の都合や、近隣で開催される他のレースなど、集客においてさまざまな影響を及ぼします。

もちろん、イベントの集客するパワーがあれば大きな影響はありませんが、例えば東京マラソンと同じ日にたくさん集客したいと言うレースを作る人は業界ではあまりいません。
ランナーだけでなく、その応援に行く人、ボランティアに行く人など、東京中のランナーやスタッフの人手を集めてしまいます。

そして、過去10年分の天気予報は見ましょう。

もちろん「過去に雨が少ないから絶対に安心」と言うわけではありませんが、雨の確率が可能な限り低い時期に開催した方が、運営上のリスクやスタッフのモチベーション管理においても大切です。

『晴れてれば大体成功』

というように、屋外イベントはどんなに準備したとしても、当日土砂降りだと「楽しかった」を「雨がすごかった」が印象として上回ります。もちろん「雨だったけど超楽しかった」はありますが、全員が同じように思ってくれるほど甘くはありません。

マラソン大会制作2:許可関係の処理

マラソン大会の制作って想像しているよりは難しくありません。
自分でビジネスをしたことがない人が簡単に始められるビジネスが『イベント』だと思います。広く声をかけて企画にお金を払って参加してもらうというシンプルなものです。

しかし、自分で広大な私有地を持っている人以外は、どこかから『場所』を借りなければなりません。その場所を借りること=会場の使用許可を得ること、これが最初のハードルになります。

場所が決まらないと始まらない、それがマラソン大会

東京オリンピック前は、それまでマラソン大会が行われていた広い会場(公園)が軒並み改修工事に入ってしまい、『会場難民』という言葉も主催者間では生まれていました。場所を抑えられないと何もできないのがレースオーガナイザーです。

だからオリジナルで許可を得た大会は真似されにくく、ブランド化しやすいのかなと思います。逆に許可が取りやすい会場は特徴を作っていかなければ集客が難しくなるなど、マラソン大会を主催する上で『場所』はとても重要な要素です。

地方には地方の魅力が、大都市には大都市の魅力があるように、『場所』というのは差別化しやすく、都市型マラソンは顕著に出ます。東京マラソンは最たるものですよね。

初めての大会は根回しも大切

マラソン大会を初めての場所で行おうとした場合、地元の方であれば行政や場所の管理権限者とも関係性が作りやすく手っ取り早いかと思いますが、地元でない限りは『誰』から話を通してもらうかはとても重要です。

行政窓口はどんなに計画書が良かったとしても、窓口担当者の責任や仕事を増やすことになるので、前向きな人に出会えることは珍しいと思います。窓口担当者ではなくもっと上の方から先に通して窓口に話が綺麗に伝わっている場合か、窓口の担当者やその上司が断りにくい人を味方につけてアンオフィシャルにお伺いを一度立ててから、改めてオフィシャルに手続きを踏むということが必要な場合が多々あります。

許可を通すという作業は、そういった根回しが重要な場合が、どの役所においても発生する可能性があります。いきなり窓口担当者に持って行き、その方が突っぱねた後に根回しして通すと確実に嫌われますので、窓口担当者のプライドを傷つけないうよう慎重なコミュニケーションが求められます。

マラソン大会制作3:デザイン

マラソン大会に限らず、イベントにデザインの力は不可欠です。そのために主催者がやるべきデザイナーに何を伝えるべきかを書いていきたいと思います。

コンセプトがはっきりしている方がいい

マラソン大会は同会場で他にもイベントが行われることがあります。また、同じような距離の大会は世の中に山ほどあります。
なぜマラソン大会を行うのか、なぜその場所で行っているのか、他にない特徴は何か、レースを通じて何を伝えたいのか、などを掘り下げて考えコンセプトをまとめ、デザイナーさんに伝える必要があります。

コンセプトがしっかり伝われば、自ずとイメージされる色(主催者が伝えてももちろんいい)やロゴ、場合によってはキャラクター、ポスターやチラシに反映されるデザインができていきます。
逆にコンセプトがブレブレだったり、特になかったりすると、デザイナーさんは『他の大会で近いイメージってどんなの?』と聞いてくるでしょう。

そうなってくるとデザイナーさんのクリエイティビティは下がります。別にそのデザイナーさんじゃなければならない理由もなくなってしまいます。もちろん良いデザイナーさんであれば、デザイナーさんの方から色々質問してくれます。こちらが認識していないことやイメージに気づかせてくれるデザイナーさんは優秀だなぁとよく思います。

参加したいと思えることを想像させる大切さ(重要)

マラソン大会やイベントって、実際に参加してみないとそれが良かったかどうかってわかりませんよね。その未知数の「良さ」を参加する前から想像させることが、集客する上で1番重要ではないかと思っています。

もちろんマラソン大会の「良さ」って主催者の意図に反して、「思ったよりも速く走れた」とか「自己ベストが出た」というコントロールができないことだったりしますが、『楽しかった』はクリエイトできると思います。

マラソン大会の主催者のゴールって『また来年も絶対参加したい!』と思わせることだと思うんです。そのためには、まず大会に足を運んでもらわなくてはなりません。

だから、参加して「楽しかった」よりも『参加する前から楽しそう』の方が重要なのです。そして『参加する前から楽しそう』は、コンセプトメイキングと付加価値(ゲストや応援団、演出等)、デザイナーさんの力で作り出すことができるのかなと思います。

デザイナーの力を侮ってはいけない

賛同してくれるかどうかはわかりませんが、私(レースディレクター)にとってデザイナーさんの存在ってめちゃくちゃ重要です。言葉で伝えきれない想いやコンセプトをビジュアルで表現してくれる大切な存在なのです。

大会運営を始めた頃は、予算がないことを言い訳に、デザイナーさんに「これだけしか予算取れないんですけど、なんとかなりませんか?」と、ちょっと失礼な金額を提示してしまっていたと思います。もちろん、イベントに予算は付き物なので仕方がなかったのですが、今は取れるだけの予算を先に確保して、その範囲でできる内容(デザイナーさんが納得してくれる対価)をお願いするようになりました。

正直、デザインを「お金」で判断するのって難しいですよね。
依頼主の金銭的余裕や感じ方で全然違います。デザイナーさんもそれをよくわかってくれていると思います。

だからこそ、最大限のリスペクトを込めて依頼できると良いのかなと思います。予算がある話なので、そのリスペクトは必ずしも「金額」で表せないかもしれません。だけど、なぜ「あなた」に頼んでいるのかをしっかり伝えることはとても重要ではないかなと思います。

デザイナーさんが作ってくれるイメージで、少なくとも大会の数%のイメージは決まってしまいますし、集客もそのイメージによって変わってきます。だからこそ、「この人」というデザイナーさんが見つかったのであれば大切にしなければなりません。

マラソン大会制作4:コースや会場のレイアウト

コースレイアウトは許可取りとも少し重なる部分ではありますが、これも重要な要素です。いつか「公認レース」を目指すのであれば、起伏なども調べなければなりません。ここではもっと簡易的な必要最低限の内容を書いていきます。

接触する可能性を極限まで排除しよう

コースレイアウトで最も重要と言えるのが『接触しないこと』です。
ランナー同士はもちろん、ランナーと一般人、ランナーと応援の人など、とにかく安全管理上ぶつからないようにしなければなりません。

そのためには道幅もなるべく広い場所がいいですし、リレーなどタスキの受け渡しがある時などはリレーゾーンの設定も重要な要素です。競技性が高くなればなるほど追い越しの際に接触する可能性が高まります。

競技性が高いレースを制作する場合は、道幅に合わせた参加者の募集も検討する必要があります。

また、つまづいたり、転んだりする要素も可能な限り排除することもお忘れなく。

スタートまでの動線、滞在できる場所の確保

動線はとっても重要です。
受付がある場合は、来場してから受付までが誰が通ってもわかるようにしなければなりません。もちろん事前の郵送物やメール等での案内に詳細に書いておけば問題はないのですが、『それらの案内は基本的に見られていない』ということを主催者が認識している必要はあると思います。

『マラソン大会の満足度はトイレの準備に比例する』なんてことも業界では言われたりしますが、これは単純にトイレの個数や順番待ちの長さが直結していることを指すのではなく、参加者が「イラっ」とすることをどこまで減らせるかに尽力するかということだと思います。

トイレをたくさん準備できていたとしても、動線が悪かったり誘導できないと一部のトイレに人が密集してしまう可能性もあります。『来場者に何も考えさせない』ということを念頭に、動線をデザインしなければなりません。

スタート位置までがわかりやすくなっているか、荷物置き場や荷物預かりまではスムーズになっているか、トライアンドエラーでどんどん改善していく内容にはなりますので、最初から100点を目指す必要はありませんが、可能な限りランナーの気持ちになって動線や誘導サインを置いていくことを意識していきましょう。

一般の人とのトラブルの避け方

マラソン大会はスタジアム開催でない場合を除き、一般人も通行できる場所を走ることが多いかなと思います。その際に一般人とのトラブルをなるべく避けるためのことも考えなければなりません。

特に河川敷などでマラソン大会を制作する場合は、狭い道幅に歩行者も自転車も、時には自転車で引っ張られている犬もいます。そういった方々と接触しないためには、2週間くらい前からマラソン大会が行われる旨の案内板も必要になる場合があります。

また、会場の近くに民家がある場合は音響の音量にも配慮しなければなりません。どんなに注意していたとしても、必ずクレーマーのような方はいますので、そういった方からクレームを受けた際に誰が受けるのか、どう対応するかも予め決めておけると、当日のトラブルにもスムーズに対応ができるでしょう。

1番いけないのは、想定しておらず、大会進行を妨げられてしまうことです。進行に支障がないような準備を設計していきましょう。

マラソン大会制作5:広報 / 広告

マラソン大会で1番やってはいけない『大赤字』
そうならないためにも、大会が開催されることを広く知らせましょう。イベント主催者の間では『集客命』という言葉があります。限られる予算を最大限活かした広報、告知に努めましょう。そして、広告/広報を怖がらず突っ込まなければ明るい未来は待っていません。

ホームページ、SNS、ポータルサイト、できることはなんでもやれ

マラソン大会を告知していく上で、とにかくたくさんの人に知らせることはとても重要です。情報の集約場所はホームページであったとしても、SNSやポータルサイトなどなんでも活用しましょう。大会独自のSNSを育てている時間がない時などは、関係者や関係企業のSNSアカウントなど最大限お借りして告知してください。

SNSはお金もかかりませんし、発信者のフォロワーそれぞれに広がっていきます。自分だけでリーチできる人が500人だとしても別の人がさらに500人、500人と広げていくことができれば無償でもそれなりの人数にアプローチすることが可能です。

小さくやる方が難しいのがマラソン大会

いわゆる一般市民が作るマラソン大会は、実は小さくやる方が難しい場合があります。趣味であれば構いませんが、計測会社の費用やレンタル品、広告費、デザイン費など諸々回収しなければなりません。

具体例(→は募集前の予算から絞る時の目安金額例)
1人5,000円で200人の大会を作った場合
計測費:150,000
レンタル品:150,000
デザイン費:50,000
写真撮影:50,000→なし
音響:50,000→30,000
MC:50,000→30,000
DJ:50,000→0
エントリー手数料:20,000
HP制作:50,000
会場費:50,000
参加賞:80,000→60,000
広告宣伝費:50,000
郵送費:16,800→0
備品購入:50,000→30,000
レンタカー代:40,000→0
諸経費:50,000→30,000
スタッフ交通費:30,000
スタッフ備品:30,000
合計:1,016,800円(1,000,000円の予算だと3ヶ月タダ働きです)

どれも別に大幅に盛った金額ではなく、控えめに書いています。
大会制作で集客が200人を切るとこのくらい苦しいです。利益なんて出ません。参加人数がわかった段階で削れるものを削っていきます。(→は参加者の人数がわかって修正する例です)

例)DJなし→サブスクのプレイリストをかける
MC2名→1名にして頑張ってもらう
音響→最低限のプランに変更(自分たちで運営する)
参加賞を単価の安いものに切り詰めます
レンタカーの予定を身内の誰かにお願いします
備品の購入を切り詰めます
その他もろもろ切り詰めます

いかがでしょうか、マラソン大会って小さくやる方が難しいのです。この予算感を考えたときに200人くらいの大会で計測会社の負担が大きすぎて、普通の人であれば心が折れます。計測会社のために大会作ってる感じになってしまってもおかしくありません。

計測については後述します。

広告費の考え方

では、どのように集客を頑張らなければならないのでしょうか。

まずは広告費=悪だと思っている人が少なからずいます。
もちろん費用対効果の出ない広告を出し続けることは、余計に赤字を計上してしまうのでマイナスになってしまいますが、それなりに告知をしなければイベントの規模は小さいままです。

上述したように、マラソン大会は小さくやる方が難しいのです。
大きくやった方が労力は必要ですが、圧倒的に黒字化しやすいです。固定費はかかってしまうので、残りの変動費は人数が増えなければペイしません。

だからこそ、広告は悪ではなく赤字を出さないための必要な手段となります。もちろんなるべく広告費をかけずに目標人数に到達して黒字になればいいのですが、すでに人気のある大会を除いては必要不可欠なのが広告費です。

近年ではインスタグラマーさんやYouTuberさんのように発信力のある方からの情報発信によって、集客を行う大会も出てきました。お金を払わなくても知名度を上げたい方であれば招待という形で情報を発信してもらえる場合もあります。

ゲストって必要?無名な大会ほど強力なパワー

マラソン大会にゲストは必要かというと、ゲストは呼べるなら呼んだ方がいいです。もちろん誰もが知っている方や、その土地のローカルレジェンド、明るく盛り上げてくれる芸人さん、いろんな方がいらっしゃますが、そのゲストさんの力で運営するマラソン大会のイメージが少しでも向上するのであれば、予算があるなら呼べるといいです。

どんなに無名の大会でも「高橋尚子さん」が来るというだけで、全国規模の集客力を持ったりします。まぁQちゃんを呼ぶのはかなりの費用がかかります。集客の費用対効果は正直わかりませんが、ゲストと呼んで相応しい方が何名も来る大会は、イメージも上がりますのでどんどん集客が楽になっていきます。未来への投資と思って、呼べる余裕があるのであれば呼んでみるのもいいかと思います。

特徴が強かったりニュースバリューがあるならプレスリリースも

私は以前運営していた大会のコンセプトが強すぎたため、毎年プレスリリース配信をしていました。すると、新聞や雑誌、ローカル紙、WEBメディアなどなど多くのメディアに掲載していただくことができました。

独自で記事を書きたくなるコンセプトが作れているのであれば、プレスリリース配信はとても有効です。リリースの配信会社ですが、当時は@Press(アットプレス)というサイトを使用していましたが、今はPR TIMESが突出しているように感じます。

こういった配信会社を使用しなくても、プレスリリースを作成し、ランニング雑誌やメディアに直接メールすることも可能です。ニュースバリューが乏しいイベントであれば配信会社は費用対効果が期待できない可能性もあるので、WEB広告などを選んだ方がいいかもしれません。

マラソン大会制作6:スタッフの確保

マラソン大会の制作に当たって、絶対的に必要な存在がボランティアで大会をサポートしてくださる皆さまです。イベント運営に慣れていない主催者のお手伝いをしたことがありますが、「それはボランティアにやらせておけばいいよ」なんて発言をしていました。

ボラさんを舐めないでください。皆様の力がなければ主催者は何もできないことを肝に銘じておきましょう。

ひとりじゃ作れないのがマラソン大会、スタッフの確保も大事な仕事

マラソン大会はひとりでは作れません。もちろん主催者(責任者)と同じくらい熱い気持ちでサポートしてくれるコアスタッフがいたとしても、中枢の人間だけで作れるほど甘くはありません。

上述したようにマラソン大会は小規模であればあるほど予算がカツカツです。これがボランティア不在で仮に20人のアルバイトを日当1万円で雇ったとしたら約20万円のマイナスが計上され、瞬時に大会は赤字になってしまいます。それはつまり継続できないことを意味します。

だからこそ、1度きていただいたボラさんに「来年もまた参加しよう」と思ってもらえる立ち振る舞いをするかが重要です。大会の予算がしっかり取れるほど収益が上がるのであれば、それをボラさんに配分してより参加しやすくしてもいいと思います(実際にそうしている大会はあります)

私は打ち上げ代を負担する形で、大会が終わった日の夜に親交を深めることにしていました。

大会運営は赤字を出さないためにも集客命というのは変わりませんが、ボラさんの集客も同じくらい命です。

お金で雇うアルバイトよりボランティアさんの方が超優秀

マラソン大会に限ったことではありませんが、主催者がお金を払って雇うアルバイトは=仕事です。全員がそうとは言いませんが、特に気持ちが入ってようが入っていなかろうが、時間を過ごせば役目を果たし、報酬がもらえます。

しかしながら、ボラさんは違います。
アルバイトとして来てくれる人の何倍も通常業務で稼いでいる人たちが、ランナーの皆様のために自分のお休みの時間を割いてわざわざ足を運んでくれています。ランナーを応援することで、自分も温かい気持ちになることを知っている素晴らしい人たちが来てくれます。当然、仕事のクオリティも高く、声かけも温かく、素晴らしい方が来てくれます。

マラソン大会の印象の多くは、当日声をかけてくれるスタッフの皆さまの印象がそのまま大会の印象になると言っても過言でないくらい、大会終了後のアンケートには「スタッフの方にとても励まされた」や「スタッフの方がとっても良かった」と書かれています。

これはどんなにお金を払って雇うアルバイトの方よりも、気持ちのこもった対応をしてくれている証だと、大会運営を終えると皆さまに教えていただきます。

マラソン大会制作7:予算イメージ

大会制作をしたことがないと予算のイメージって湧きませんよね。もちろん削れるところはいくらでもあるのですが、予算を削ってクオリティが参加費に見合わなくなってしまっては本末転倒です。何を削って、何に予算を割くのか。どのくらいの手残りを残したいのかにもよりますが、少しは参考になる話ができればと思います。

まず予算全体を考えた時に支出は『マラソン大会の作り方5:広報・広告』の「小さくやる方が難しいマラソン大会」でざっくり書きました。大会規模が大きくなるとこれに警備や駐車場、現地までの交通機関(バスの手配)、スタッフの人件費、エントリー管理費などなどもっともっとたくさんの項目が出て来ますが、ここでは割愛します。

とにかく支出はそれなりにかかります。もちろん支出を抑えるのは当たり前ですが、ここでは収入を増やす努力について書いていきます。

参加費以外の収入の作り方 協賛・出展費・オプションなど(グッズ / 写真)

協賛企業について。

マラソン大会の多くには、協賛企業がついています。大会の理念やコンセプトに共感し、会社の商品や資本を提供してくれる企業を指します。主催者側も可能な限り協賛企業のロゴを掲出したりするなど、応援してくれている企業のイメージが上がるように努力をします。

大会運営には絶対になくてはならない存在ではありませんが、大事な収入源になるのも事実です。協賛企業のブランドイメージによって、逆に大会側のイメージが上がることも多々あります。

しかし、「良い協賛企業」ばかりでないのも知っておいた方がいいでしょう。中には「協賛してやってんだからこうしろ」と上から目線で支払っている費用以上のことを強く求める企業もあります。

正直、それらに対応する時間を考えたら、割りに合わない場合もありますので、協賛というありがたさよりも重荷になってしまうこともあります。それが大会開催地の地元企業であれば尚更です。協賛企業と一口に言っても色んな人がいますので、見極めも大切です。

出展について。

マラソン大会の会場の空いているスペースを企業に貸し出し、出展費を頂戴するパターンもあります。大会の盛り上げや滞在時間を伸ばしてくれる飲食ブースや、マラソン大会であればランニング用品のメーカー、ショップなど、少しでも宣伝や販売に繋がればと思ってくれる企業もあります。

参加者の数にもよりますが、出展費としていくらか費用を頂戴することも可能です。金額を提示してメリットがあれば快く参加してくれる企業は多くいますので、知り合いなどを伝って募集してみるといいでしょう。

オプションについて。

マラソン大会によっては、プログラムを販売していたり、大会のロゴが入ったTシャツやグッズを販売している大会もあります。単体でグッズ制作をすると、よほど人気の大会でない限り在庫とのバランスで黒字にすることは難しいですが、前年度の余った参加賞などを翌年に販売している大会は多いです。

また、現地でカメラマンの記念撮影ブースを設けたり、駐車場を大きく借りて有料で提供したりなど様々な収入源が考えられますので、これから大会を作る場合は他の大会が何を販売しているか参考にしてみるといいでしょう。

マラソン大会制作8:物品管理

マラソン大会当日で失敗しないために、物品管理は欠かせません。当日、大切なものが手配できていなければ大会自体が成り立たなくなってしまう可能性もあります。だからこそしっかりと計画を立て、物品の不足が内容慎重に慎重を重ねましょう。

机や椅子があると滞在時間が延びます | 気を利かせてタオルで拭いてくれています

必要な備品の調達方法 | 購入かレンタルか

これは非常に重要な内容です。購入した方が安い場合と、レンタルの方がいい場合。見落としがちな保管するための経費など、マラソン大会の物品管理は大量になるため、長期で使用し嵩張らないものは購入した方がいいとか、様々なバランスがあります。保管する場所の広さや、どのくらい続けられるかなど色んな要素との兼ね合いがありますので一概には言えませんが、安易に3回で元が取れるから買ってしまおうと思って買うと、保管に苦戦したりするので慎重に考えましょう。

個人的には音響設備は思い切ってたくさん買いましたが、他のイベントにレンタルすることで原価分は取り戻せたので良かったかなと思います。しかし、初期の小規模の音響は、一定の会場規模を超えると使い物にならなかったので、ある程度のレベルが必要かなと思います。

予算はイベントにおいては何事にもついて回ります。ニュースバリューの創出や来年の広報に向けての投資として考えられるものであれば、多少のリスクを負ってでも購入しようと思えましたが、赤字になるくらいだったらまずは節約がいいのかなと思います。どっちか迷った時は、リスクを抑えるためにレンタルの方が無難ですね。

保管場所、返却のタイミング、運搬方法とスケジュールなど

マラソン大会の備品の数は人数規模にもよりますが、トラック数台分にもなります。会場費用との兼ね合いで前日に全て会場に入れられればもちろんいいのですが、規模感によっては前日に入れられない場合などもあります。

そこで備品の量に応じた車両の手配、運転手の確保、備品を集合させる場所の確保、備品発注のタイミング、積み込むときの人手の確保、拠点から会場が遠いときは運搬のスケジュールに至るまで緻密な管理が必要です。

運転の得手不得手や、予算が足りずに知人から借りたらマニュアル車で運転できる人が少ないなど、想像力を膨らませて時間が間に合うのか、物が積み込めるのか、レンタルしたものを返す車両は足りてるのか、などなど計算していきましょう。

マラソン大会制作9:盛り上げるためにできること

マラソン大会の主催者の1つのゴールである「また来年も絶対にきたい!」と思わせるために、当日の参加者の印象をデザインしていかなければなりません。

音響 / 音楽 / MC がよければ大体成功

予算がカツカツになってくると削られがちな音響やMCさんの費用ですが、マラソン大会って終わって帰る時に「良かったか」「良くなかったか」をざっくり判断すると思います。で、細かいことなんて数週間もすれば忘れてしまうんです。

だから、「楽しい雰囲気だったか」はとってもとっても重要なのです。

心地よい音量でアナウンスが聞こえ、MCさんが滞りなく進行してくれていて、気持ちが盛り上がる音楽が流れて、運営で細かい指摘があったとしても「楽しかった」という印象で終わらせることができます。

逆に音量が小さくてアナウンスが聞こえない、スタート場所がどこだかわからない、シーンとしている大会は「あんまり盛り上がっていなかった」という印象を残してしまいます。

だからこそ、音響・音楽・MCは重要だと思います。最悪音楽はプレイリストでどうにかなったとしても、音量が適切であることは非常に重要です。

出展者 / 飲食ブースなど

マラソン大会の盛り上げに一役買ってくれるのが出展者の存在です。もちろん不在だとしても成り立たないことはありませんが、飲食ブースがたくさんあるだけで「お祭りのような」気分を演出することができます。

他にもイベントに多くの出展者がいることで、空白の時間を埋めてくれるので、例えば参加者以外に応援だけ来た人も手持ち無沙汰にならずに楽しむことができます。イベントの滞在時間も延びるので、参加者数が多い雰囲気も作ることができ、協賛企業にとっても出展者にとっても嬉しいことです。

また、主催者側で飲食まで準備するのはとても困難ですので、外注して来てくれるお店などを探しましょう。特にレースが終わった後のビールやドリンクがあるとプチ打ち上げもその場でできますので、参加者の「楽しかった」につながります。

イベント内イベント

イベント内イベントについては、なくても問題ありませんが、「楽しかった」の演出になります。もちろんゲストが盛り上げてくれたりもいいのですが、1番簡単にできるイベントは『準備体操』です。

大規模なマラソン大会では難しいかもしれませんが、スタジアム開催などであれば、準備体操がとても盛り上がると一気に会場のボルテージは上がります。

その他によく行われているのがゼッケン番号を利用した抽選だったり、じゃんけん大会だったりなど、それほど予算をかけなくても盛り上がるイベントを作ることはできます。

マラソン大会制作10:計測会社の選定

マラソン大会を制作する上での特異なことは他のイベントと違い『計測』が必要なことです。もちろん楽しむためのレースと割り切って募集をし、計測がないということもありますが、正直計測が入らないイベントの集客は難しくなって来ている現状があります。

そこで『計測会社なんて誰に聞いたらいいのかわからない』や、『高すぎて無理』と諦めてしまう方に向けて、計測会社について知っていることを書いていこうと思います。

計測方法や計測タグの種類によっても値段が変わってきます。
基本的に多く採用されているチップ計測はマットからの信号を受信するものと、マット側が信号を受信するものなどがあります。大きな大会になればなるほどミスが起きないようにマットの数を増やす傾向にあり、このマットの枚数×参加者数×計測ポイントで計測費用がかかることがあります。

大規模な場合の例

例えば大規模フルマラソンの場合、計測マットが計測地点1つに対して3枚くらい設置されており、スタート、5km、10km、15km、20km、ハーフ、25km、30km、35km、40km、42.195kmと11箇所の計測地点があり、それに参加者の人数が掛け算で金額が算出されます。
大規模になればなるほど計測はミスが許されなくなり、自ずと計測に保険をかけるのは当然の流れになりますが、3(枚)×11(箇所)×人数×計測単価という形になってきます。

仮に1箇所100円で計算したとしても1人あたりの計測費は3,300円になり、10,000人が参加したら計測費用は3,300万円と莫大になります。ただし、この記録がなければマラソン大会は成り立ちませんし、計測あってのマラソン大会でもあるので仕方がないと言えます。
場合によってはマットの枚数を計算に入れずに(同じことではありますが)1箇所300円×計測地点×人数のような計算をする場合もあると思います。
もちろん、これだけの規模のレースになればボリュームディスカウントもあると思いますが、ざっくりとそんな計算が行われています。

小規模な例

もちろん、小規模でもっと安価なサービスもあり、例えば基本利用料が30,000〜50,000円くらいで、1人1箇所300円×人数などの計測会社もあります。
ざっくり言うと、200人の大会で60,000円+仮に40,000円(基本料)+オペレーター30,000円=130,000円
→参加費4,000円だとすると、800,000円の参加費のうち130,000円が計測費です。このくらいが最低金額だと思います。これにゼッケン代やら完走証で200円×200人=40,000円、これだけでも税込187,000円が計測関係費です。

マラソン大会の主催者が儲かってるように勘違いされるのですが、時間に対する利益率や利益額で考えると、ビッグレースでない限り、主催者あまり儲からないのが通例です。(もちろんやり方次第だと思いますが)

大体ゼッケンに計測チップがくっついています

予算を抑えるために

計測地点を減らすことで経費を抑えることは可能な場合があります。フルマラソンの場合は途中で計測ポイントを複数入れるのが通例ですが、例えばハーフマラソンレベルになると、スタート地点の後はゴールのみ計測という場合もあります。

シリアスランナーであれば5km、10kmの通過タイムも知りたいと思いますが、ランナーの多くはフィニッシュタイムだけでも満足してくれますので、予算が厳しい場合は中間計測を外してみてください。

また、チップ計測の中には、計測タグを計測会社に返すタイプのものと、処分しても構わないものが存在します。計測会社としては計測タグを再利用することでコストを抑えられますのでその分安価にサービスを提供することができますが、計測タグをゴール地点で回収するためにはそれなりの人数のスタッフを確保しなければならず、その人件費とタグの費用との兼ね合いでどちらかを選べる場合があります。

コストが高いなと感じた場合は、この計測タグについても確認し、回収する努力をするなどでコストを抑えることが可能です。
小規模レースに特化したスタッフ非派遣型のサービスなどもありますので、計測費用がどうにかならないかと困った場合はお問い合わせください。また、今度時間がある時に書けたら書きます。

備品は計測会社から借りたほうがレンタル会社より安い場合がある

また、計測会社の規模にもよりますが、計測会社が持ち合わせている機材を借りることでトータルの費用を抑えることも可能です。

計測会社は備品のレンタル会社ではないので、道具の都合がつけば安価に備品をレンタルしてくれる場合があります。本業の発注単価が高い分、融通を聞かせてくれるパターンです。
私は長年計測会社から発電機を借りていました。

レンタル会社で約1万円する発電機も、計測会社が5000円で貸してくれたりしていました。トータルのコストバランスや費用を抑えるためにも、計測会社に色々お願いしてみるのは必要な手段です。

マラソン大会制作11:各種事務手続き

マラソン大会を成功させるために不可欠な事務手続き

これが大好きなオーガナイザーは恐らく少ないでしょう。できることなら避けて通りたいのが事務手続きです。もちろん、許可取りは大事な仕事ですし、その他にも自治体の土地を借りるのであれば後援名義の申請をしたり、公道を少しでも走るのであれば管轄警察とも折衝しなければなりません。

警察に協力を仰ぐのはなかなか骨が折れる作業になりますが、警察側のデメリットとメリットを把握した上で調整に臨むと協力の可能性が広がります。もちろん、誰から伝えるかと、どのように伝えるかによっても変わってくるので地雷を踏まないように気をつけましょう。

レース当日まで

レース当日までの事務手続きは、たっくさんあります。
各種許可申請に関わる資料作成と交渉資料(その前に必要な許可がなんなのか調べなければなりません)、後援名義申請、協賛営業資料作成、消防署への催し物の届出、飲食を含む出展がある場合は揚煙行為の届出、保健所への届出、など想定していなかった届出なども発生することでしょう。

でも大丈夫。応援してくれる自治体の職員が見つかったら「必要そうな許可申請って何がありますか?」と聞いてみてください。きっと、相談に乗ってくれると思います。
スタジアム内で完結するレースは許可申請がいらないので楽です。

また、プレスリリースの作成など広報資料、ホームページ制作、SNS、エントリーサイト制作、エントリー受付終了後の集計、計測会社へのデータ納品、参加者からの問い合わせの対応、備品の購入、予算割、経理処理、レンタル会社への発注、MCさんとの打合せ、保険の申し込み、参加賞の発注、入賞賞品の調達、大会の台本制作、スタッフの資料制作、スタッフとの打合せ、制作物の発注、デザイナーとの打合せ、開会式の挨拶の順番の確認、政治家やVIPの対応、カメラマンとの打合せ、ホームページの随時更新などなど事前に考えなければならないことは、挙げればキリがありません。

落ち着いて考えて欲しいのは、1つ1つクリアしていければ必ず終わりがやってきます。私は1200人くらいのレース制作を行っていましたが、その規模までであれば1人でなんとか対応ができます。もちろん複数人で分業できるとより楽ですが、1500人を超えると運営は外注しないと成り立たないと言われています。

レース終了後

レース終了後もまだまだ事務処理から解放されることはありません。
レースの終了後は、開催報告書を作成して後援名義を出してくれた管轄所への挨拶や、協賛企業への挨拶、各種関係者への挨拶、レースリザルトのアップロード、大会画像のアップロード、SNS等の更新、レンタル備品の返却、経理処理、会場の復旧、打上げの手配、などなどやることはたくさんあります。

もちろん使用する会場や大会関係者との関係性などにおいては割愛できるものもありますが、レースの主催者はざっくりこんなことをやっています。
これで赤字でも出そうものなら耐えられません。自分の自由な時間を投資してさらにお金まで負担して参加者を喜ばせる・・Mの極みです。

だから、『絶対に赤字を出さない運営』を考えなければなりません。そこで大事になるのが予算イメージと、運営規模のチョイスです。初めてだから小さくやろうというのは間違っていませんが、それなりにちゃんとした大会を作ろうとした場合は、小さくやる方が難しいのは上述した通りです。

マラソン大会制作12:当日の段取り

当日の段取りまで済んで仕舞えば、当日はあまりやることはありません。初めての大会の場合は細かいところまで指示が事前に出せない場合もあると思いますが、当日なるべく本部に座っていられるように前日までの間になんとか仕上げましょう。

主催者は挨拶回りだけで済むのが理想

とは言うものの、初めからそんな運営は難しいと思います。予算や人手が十分に足りているレースを企画できているのであれば問題ありませんが、予算がないから主催者がMCを兼務したり、選曲もやったり、ボランティアさんへの指示も出したりなど、当日はめちゃくちゃな兼務をすることも考えられます。

だからこそ、業務を細分化して割り振れる仲間を最初に揃えることが重要です。また、大会のボランティアに慣れている方もいるので、そういった人にも思い切って甘えてみてください。ボランティアスタッフの多くは当日はじめましてになってしまいますが、可能であれば事前にWEB上でもMTGを行い、どんな大会にしたいか、当日の優先順位や大切にして欲しい判断基準、心構えなどは共有しておくといいのかなと思います。

スタッフマニュアルの制作も必須です。
特にボランティアで来てくれる人は、当日支持されるのを待っています。簡単な指示で動けるような情報の共有が必須になります。

MCさんとの事前の打ち合わせが当日の負担を減らす近道

さらに言うなら進行管理のできる「タイムキーパー的な方」もいるとなお良いです。
何度もチームを組むMCさんであれば、さらに大体のことをMCさんがやってくれる場合がありますので、イレギュラーな対応をすれば良いと言うことになりますが、そのためにも情報をしっかりテキストに起こし、MCさんが進行に困らないように努めましょう。

MCさんは漢字の読み方1つでも気を遣うので、なるべく当日の負担を軽くするためにもふりがなまで振っておくくらいの心遣いができると良いのかなと思います。

マラソン大会制作13:スタッフの動かし方

大会では多くのスタッフの力が必要です。いろんな大会でいろんな運営を見て来ましたが、スタッフ同士が顔見知りの大会は非常に安定しているなと思います。もちろん毎年参加しているから顔見知りにもなるわけで、さらに言えばそのオーガナイザーの大会のスタッフになるのが趣味のような人たちがいるとものすごくパワフルです。

スタッフが知りたいことを理解する

スタッフがスタッフに説明してくれています

スタッフの知りたいことは、「私何やれば良いですか?」と言うことです。何かの役に立てている実感があればあるほど、積極的に参加してくれる方が多いです。一方、「何をしたらいいかわからない」と言う状態を長時間与えてしまうと、「いなくても良かったかな?」と思ってしまいます。

本当は絶対にそんなことはないはずなのに、人手が足りていないのに、指示が上手く通らずそのような状態にさせてしまったことは、私も何度もあります。
だからなるべく「自分はこのポジションを頑張る」と言うところを与えられるように、事前にわりふりましょう。そのためにも、スタッフマニュアルは必要ですし、なるべく早めにお渡し(メール等)できると、当日のイメージが湧きますし、名前が入っているだけで必要と思われ、休んだら迷惑かけてしまうと思ってもらえます。

これはとても重要で、当日のボランティアさんのドタキャンを防ぐことは、イレギュラー対応を避けるためにも必須なコミニュケーションです。

相互のコミュニケーションを促そう

当日、お世話になるスタッフの皆さまへの感謝の意を最初に表しましょう。
リアルな話、みんなの力がないと大会制作は詰みます。

そして、みんながリラックスした状態で参加できるように、出欠を取りながら名前を確認したり、余裕があれば呼んで欲しいあだ名をネームプレート(余裕がない時が殆どなので養生テープにマジックが定番)等に書いてもらい、ひとりひとりの顔と名前を認識し、余裕があれば雑談もしてみましょう。

大会のスタッフに慣れている人であっても、当日誰もが「アウェイ」の環境からスタートします。みんな話しかけてもらうのを待っています。早く溶け込みたいのです。だから、いち早く話しかけてあげてください。

ひとりの力では難しいので、気心知れた仲間がいたら積極的に初めてのスタッフに声をかけてもらうよう伝えておきましょう。

優秀なスタッフを見つけよう

必ず「優秀な人」がボランティアさんの中に存在します。
ここでいう「優秀」とは、頭が良いとかではなく、何タイプかいます。

特に「優秀」と思う人は、主催者側が指示を出す前に先回りして、問題が起きている、起こりそうな部分を解決してくれる人ですが、他にも

1、何を頼んでも温かく受け入れてくれる人
2、臨機応変に対応できる人
3、コミュニケーションお化け
4、笑顔が最高に素敵な人
5、とにかく元気な人

など、主催者としてありがたすぎる人が必ずいます。
そんな人を見つけたら、次回に向けてナンパしましょう。次回同じようなイベントをする時にも来ていただけるとしたら、それはもうとても素敵な出会いになります。

スタッフの配置は慎重に行うべし

オーガナイザーを続けていて思うことは、どこにどのスタッフを配置すれば良いかを適切に見極めることです。

組織で言えば人事ですし、スポーツで言えば監督の采配です。

初めて来てくださるスタッフの中でも人員配置に必要なアンケートなどを事前に取ることで、どの程度のポジションを任せていいかや、その人にとってのモチベーションを把握することができます。もちろん会ってみないと正解は分かりませんが、事前情報はとても役に立ちます。

大会スタッフが趣味のような人はハードなポジションに、初めての学生は受付など目が届くところになど、少ない情報からでもポジションを決める上での情報にはなり得ます。

マラソン大会制作14:その他細かいこと

ここまでで書ききれなかったことを挙げておきます。私の経験もまだまだなのですが、友人の大会や、各地の大会運営を見ていて気が付いたり、運営してきた結果の教訓などを箇条書きで書いていきます。

・参加者が1500人を超えたら外注を考えよう
・地元 / 政治 との繋がりは慎重に選ぼう
・備品担当は、備品リストは頭の中に叩き込もう
・困ったら頼る
・話しかけやすい隙を作っておく
・現地視察はマメに行う
・出展者の利害関係も考えよう
・好きな人を集めよう
・同じ人に毎年同じポジションを任せよう
・写真や動画は予算が許すならプロを入れるべし
・撮影した画像は無料で配布すべし
・どんな時も冷静に
・場所選びは慎重に行うべし
・ゴミの処理問題も頭に入れておこう
・成功している主催者は神経質か鈍感か
・主催者が楽しんでいるレースの方が盛り上がる

チームTシャツなどで来場されると盛り上がりますね

個人的なマラソン大会に対する想い

私の考えるマラソン大会は、アートです。

それも自分だけでは作ることができない、特別な作品です。
同じ瞬間は2度と来ないし、同じスタッフや参加者が揃うことも2度とない。主催者、スタッフ、参加者、みんなで最高に楽しかったと言えるレースが作りたいなといつも思っています。

だから、参加者にはエントリーする前から楽しみにしていて欲しいし、会場に着いた瞬間からワクワクして欲しいし、誰よりも楽しんで帰って欲しいと思っています。マラソン大会を運営していると、知り合いでもない方が『また来年も来ます!』と言ってくださることがよくあります。私はその一言のために頑張れると思いますし、それをサポートしてくれた仲間にも共有したいと思っています。

時には採算度外視でコース上にレッドカーペットを敷いてみたり、参加者全員にコスプレさせてみたり、準備体操でZUMBAを踊らせることを強要したり、色々やって来ました。その瞬間に『え?』と思われることもありますが、リピート率は高いと思います。

そして、昨年初開催で今年も「初めてのトレイルランニング」をコンセプトに行うTHE FIRST TRAILを東京青梅市で4月6日に開催いたします。同時開催のTRAIL OPEN AIR DEMOもディレクターで参加しています。ぜひみなさん遊びにきてください。

最後になりますが、東京近郊でのランニングイベントの制作や関東近郊にて音響運営に関してご依頼があればお問い合わせフォームよりぜひご連絡ください。

馬場 保孝

馬場 保孝

ディレクター、音響運営なんでもお任せください。 イベントの便利屋さんです。最近WEBも頑張ってます。

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