THE FIRST TRAIL を4月1日に無事開催いたしました。
前回、『THE FIRST TRAIL トレイルランニング大会の制作の現場から(前編)』では、第5章の広報・広告まで記載いたしました。今回は続きを書いていきたいと思います。
また、全体像についてチェックしたい方はこちらも合わせてチェックしてみて下さい。
( 2024.02.14
大会制作歴11年目です、今回はマラソン大会を制作する時に、私が考えていることを書き出していこうと思います。なぜ、書こうかと思ったかというと...
マラソン大会(イベント)制作時の企画・デザイン・運営など
6、スタッフの確保
レース制作者、イベント制作者にとって、重要なマンパワー。
特にマラソン大会などの自主企画において、当日スタッフとしてきてくれる人に対して、最低賃金だとしても十分なアルバイト代を払えるほどのイベントはほとんどありません。
なので、スポーツイベントの多くは「ボランティア」さんの力で成り立っています。
自らの時間を投資してボランティアをしてくださる方の人柄や、温かい対応には毎回感動させられるばかりで、なくてはならない存在です。
そういったボランティアさんを集められるかが主催者の重要な任務です。
私も何年もイベント運営をしてきたので、イベントを行うぞって思った時にSNSで呼びかけると、なんとなくスタメンのような人たちが集まってきてくれます。しかし、なんのつてもなかった10年前は、友人たちに声をかけてなんとか集まっていただいていました。友人たちも1回目は快く来てくれますが、それぞれの予定もライフステージの変化もあると毎回は難しいというわけで、10年間の多くに関わってくれた人たちは、「スポーツボランティアが趣味」のような人たちが多かったかなと思います。
もちろんそういった方は他の大会にも足を運ぶわけで、スタッフとしてきてくださった時に「また応援したい」と思ってもらえる雰囲気が大会にあるかが重要なのかなと思います。
主催者の立ち振る舞いとして、最低限名前で呼ぶとか名前を覚える努力をするとか、来てくださった方に感謝が伝わるようにするとか、大会を一緒に楽しんでもらえる努力をするとか、言葉では言い表せませんが一言で言うと「雰囲気」を作ることは重要かなと思います。
敢えて無駄を作る
例えば、同じような参加賞を制作する場合も、時間的に業者さんに頼めばさっさと済む内容だったとしても、敢えてみんなで自作する機会を設けました。どんなモチベーションで来てくれているかは人それぞれだと思いますが、みんな人と関わることは好きで、『一緒に何かをやる』ことを前向きに捉えてくれます。ちょっぴり予算が浮くという言い訳を敢えて作って「手伝ってもらう」機会を増やすと、参加しているという気持ちも強くなり、スタッフが大会のファンになってくれます。
今回は参加賞に転写シールを貼る作業や、写真にある応援用の手旗を作ることを大会2週間前に参加できるボラさんと一緒に制作しました。予算だけを考えるのであれば「別になくてもいい」「無駄な予算」と言われてしまうかもしれませんが、スタッフが当日安心してきてくれる環境を作る、楽しく参加できるということを考えると全然無駄ではありません。ボラさんと一緒のチームとなってイベントを作るという過程を共有しましょう。これオススメです。
7、予算イメージ
肌感覚ですがマラソン大会の運営は、大人の参加者が200人が損益分岐くらいに感じます。もちろん運営方法にもよりますし、計測を入れなければそんなに必要ありません。今後発展させようという大会はまずはここを超えられるように最低限の目標設定をした方がいいと思います。
仮に参加費4,000円で200人の集客で予算が約800,000円です。
1番ネックな計測代、会場費、レンタル備品、参加賞、入賞賞品、スタッフの交通費や昼食代・・・ランナーやスタッフの満足度はそのまま口コミとなって次回開催の集客に反映されますので、下手にケチることはしないのがベター。
無料でお手伝いしてくれるいい人が実行委員会の中にいたとしても、デザイナー、MC、DJ、等々の方には、お友達価格だとしてもある程度お支払いしておかなければ2回目はかなり厳しい戦いが待っています。
今回は集客期間が約6週間ということもあり、前半2週間でアーリーエントリーという「早く申し込むと参加費が500円お得」キャンペーンを行い、早めにある程度の人数予測を立てて予算を早めに確保することにしました。
2週間で大人のエントリーが110名ほど=440,000円の見込み予算が立ったため、さらに広告費に注ぎ込みトータルで270名くらい(ゲストや友人等で費用いただいていない人もそれなりにいました)の集客となりました。
予算0からのスタートなので、デザイナーさんの外注費や広告費、参加賞、運営にかかる計測費以外の費用は全て前払いです。集客がうまくいかなかったらと思うと、なかなか個人でマラソンイベントを行うのってハードルが高いですよね。
収入を増やす努力でできることは、今回に限っては展示会に合わせてのレース制作だったため出展費をいただくのは無理で、その中から協賛を募るのもちょっと難しい関わり方でした。なので今回はグッズ制作のみを行いました。スタッフのTシャツを作るついでに参加賞のあまりを売ったり、スタッフTシャツの色違いを販売したり、トートバッグの無地のものを購入してアイロンプリントでロゴを入れたり・・大した収入にはなりませんが、大会にファンを作る活動にはなると思いますので、グッズも利益というよりはファンを増やす意味で制作してもいいと思います。
8、物品管理
今回はちょっと広めの公園内を周回するようなコース設定だったことと、エイドステーション等を設置しなかったことで必要な備品を可能な限り省略しました。これは経験とともに無駄を省けるようになっていくので、最初から「最低限」で戦おうとすると、思わぬ落とし穴が出てくる可能性があります。まずは主催者が安心できる量の備品の確保をリストアップしましょう。
必要な備品を購入するかレンタルするかの判断
かさばるものは極力レンタル。
かさばりにくくレンタル単価が購入単価に近いものは購入
私の場合は、年に何度かイベントを行ったり仕事でサポートに行ったりするので「音響設備」は過去に購入しました。音響の専門会社じゃない普通のイベントレンタル会社だと、窓口の人がチンプンカンプンの時があるのである程度わかってくれる会社を探しましょう。
今回購入したものは「カラーコーン」です。
少し小さめ(45cmくらい)のカラーコーンで、レンタルするのとほぼほぼ変わらないくらいの単価だったので保管するのは嫌ですが買いました。
レンタルについてもある程度見積もりを複数者で取って、あとは窓口の人との交渉や相性等を考慮して決めると良いと思います。私の場合は何度かダス〇ンさんも使っていましたが、年に何度か発注してても「担当者」のような人ができず毎回1から説明するのにうんざりして、今はイベントコミュニケーションズさん(以下、イベコミ)にお願いしています。このイベコミさんとの出会いは、イベント業者が集まる展示会が毎年国際展示場でやっていて、そこで話した時の相性が良かったので、それ以降もう8年近くのお付き合いになります。
イベント主催者として『担当者』のような人ができると、「このくらいの予算でなんとかなりませんか?」という相談ができるようになってきます。浮気しない代わりに毎回甘えてます。
備品の搬入・搬出スケジュール
これも忘れずに計画しましょう。
自分が購入したり準備したりする備品の管理、業者にお願いする備品など、備品の数は規模が大きくなればなるほど大量になってきます。個人レベルで動かせる物量であればなんとかなりますが、自分の頭の中で考えていることをいかにわかりやすく共有して「人にやってもらう」かが重要になってきます。自分だけがわかる資料ではなく、相手にも想像しやすい資料の作成に努めましょう。
※業者さんと慣れてくると、ざっくり話して後は現地で・・みたいな感じでアバウトになってきます。
9、盛り上げるためにできること
これ、めちゃくちゃ重要です。イベントやマラソン大会にお客さんが来る理由って『楽しい』からなんですよね。大会当日の細かいことはすぐにみんな忘れます。
でも『楽しかった』と脳に染み込ませるくらい楽しませることができたら『また来年来ます!』は作れます。もちろんスケジュールや都合はそれぞれあるので全員は無理ですが、そのくらい気合を入れて『楽しい』をデザインしていきましょう。
中でも私が重要視しているのが、準備体操です。
これはみんなが同じ目線で参加できる一大イベント。しかも今回は小さなお子さまも参加できるようにしたので、キッズ向けと大人向けで準備体操は2回行いました。
こういう『楽しい』ことをストイックに考えてくれる準備体操のお姉さん(今回は矢田夕子さん)をキャスティングし、参加者と同じ目線で楽しんで参加してくれるゲストもなるべくステージ近くで参加してもらいます。
聖蹟桜ヶ丘のTREATから矢田夕子さん
ゲストのかんちゃん
準備体操は音楽に合わせて行うと、参加しない方が浮くという強制力と、普段なかなかやらないので非日常感が味わえ、さらにみんなで同じ動きをすることで参加者の気持ちが一気に打ち解ける最高のアイスブレイクとなります。
ちなみに子供用は「ドラえもん」(星野源)、大人用は「可愛くてごめん」という選曲。夕子さんが考えてくれて会場の空気を見事に楽しい方向で作ってくれました。
ゲスト
左からMCでモデルの山下晃和さん、かんちゃん、さやぴ、上田瑠偉選手、三浦裕一選手、星野由香理選手
みんなそれぞれの世界で大活躍している6名が協力してくださり、一緒に楽しんで参加してくれたことで、トレイルランニングが初めてという方に、「トレランって身近で楽しいこと」を伝えてくれたと思っています。業界のことがよくわかる方からは、「いきなりできた大会なのにゲスト豪華すぎ」と言われたりもしました。SNS等で情報をチェックしている方からすると「よく知ってる」選手やランナーがたくさんゲストで来てくれるだけで、ゲストと同時に大会のことも好きになってもらえるという効果があります。
子供も参加してもらう
トレイルランニングのイベントで親子で参加できる大会って実はそんなに多くありません。「お子さんと一緒に楽しめる」カテゴリーがあることで、会場全体がやさしい雰囲気に包まれます。もちろんストイックでピリピリしたレースも嫌いじゃありませんが、まずは参加のハードルの低い大会から作っていく方がイベントを主催する時のハードルも低くなります。
この他にも、普段はモデルの山下さんがほとんど休むことなく喋り続けて会場を盛り上げてくださったり、DJさんたちがず〜っと音を絶やさずつないでくれたりすることで、常に音楽やアナウンスが流れている会場になるので楽しさが継続していきます。
出店等
同会場でTRAIL OPEN AIR DEMOが開催されているということで、出展者が50社以上、ブランドにすると70を超える業者さんが会場内で出店しているので、もうどの大会よりも雰囲気はお祭りのようになったと思います。これは努力してできることではなく、たまたまその会場でレースを作らせていただいただけなのでラッキーでしたが、他の会場で行う大会だとしても、出店者は出てくれるお店が損しない程度の集客があるのであればぜひ声をかけてみましょう。
10、大会の雰囲気
もう大会が始まってしまえば、主催者に当日できることって限られてきます。
当日のイレギュラー対応くらいしかやることはありません。可能な限りサポートしてくださるボラさんやゲストの方に甘えて、会場の雰囲気を楽しみながらトラブルがないかをチェックする。そして、キレッキレのスタッフに権限を与えて良きに計らってもらう。
全部の細かい判断は主催者がするよりも、信頼できる味方にお願いをした方がスピーディだし色々上手くいく。そんな味方ができるまでは頑張って自分で対応するしかないかもしれませんが、良いなと思う人に可能な限り携わっていただける環境を作ることはできるので、信頼していることが伝わるようにコミュニケーションをとっていくことが望ましいかなと思います。
では最後に、大会の雰囲気が伝わる写真をいくつか掲載しておきます。
もし参加してみたいと思っていただけたら2024年は恐らく4月6日(土)開催なので予定を空けておいて下さい。また、大会制作してみたいけど不安・・という自治体の担当者さま、企業さま、サポートさせていただきますのでぜひお問い合わせよりご連絡ください。また、大会を通じてカメラマンの小関さんが素敵な写真をたくさんとってくれました。写真ってほんと大切だなって感じますね。